ヴェールを脱いだ「ザラ」 × ジョン・ガリアーノ 「再構築」は想像以上、ファストファッションのアーカイブがオートクチュールの世界に(WWDJAPAN.com)
58 分前

「ザラ(ZARA)」とファッションデザイナーのジョン・ガリアーノ(John Galliano)によるコレクション「リ{フォーム}ザラ オーサード バイ クチュリエ ジョン・ガリアーノ」の第1弾が発表になった。両者は今春、今後2年に渡り、ガリアーノが「ザラ」のアーカイブを再構築して季節ごとにコレクションを制作すると発表。ガリアーノは、「オートクチュールのプロセスと独創性を指針として、『ザラ』の過去のシーズンのアイテムを直接手に取り、それらを分解・再構成することで、新たな季節感あふれる表現と洋服へと昇華させていく」としていた。
そのコレクションで真っ先に思い浮かぶ印象は、「予想以上で、その遥かに上を行くほどガリアーノ」だ。スティーブン・マイゼル(Steven Meisel)が撮影したビジュアルから、直近の「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」、昔の「ディオール(DIOR)」もしくは自身のブランド「ジョン・ガリアーノ」を思い出す人は多いのではないだろうか?ガリアーノは、フランス革命の後に登場した反骨精神溢れるダンディとディーバ、「レ・アンカルイヤーブル(フランス語で『信じられない男たち』の意味。風変わりで、極端なファッションに身を包んだ若者たちを指す)」と「レ・メルヴェイユーズ(同じく『気高く優美な女性たち』の意味。貴族の誇りを持ち、自らの感覚を貫いた女性たちを指す)」を現代的に蘇らせたという。古典的で、退廃的で、だからこそ浮世離れしているほどに美しいクリエイションは、まさにガリアーノの真骨頂。そして「レ・アンカルイヤーブル」と「レ・メルヴェイユーズ」は、ガリアーノがロンドンの名門セントラル・セント・マーチンズの卒業制作として作成したコレクションに付された名前でもある。ある意味、ガリアーノそのものというわけだ。今回のコレクションの特徴は、ブルジョワなエスプリと、ノワールな世界を想起させる耽美なグラマラス。ガリアーノは、自身の美意識を「ザラ」というマスブランドにも通底させようと試みた。
想像を超える「再構築」の手法
技術というより哲学的アプローチ
コレクションは上述の通り、「ガリアーノが『ザラ』のアーカイブを再構築」して誕生したものという。しかしマイゼルによるビジュアルを見ると、次第に「これは、本当に『ザラ』のアーカイブから誕生しているのだろうか?」という疑問が湧くだろう。これまで店頭に並んできた多くのベーシックな洋服が、いくらガリアーノとはいえ「再構築」すると、こんなにドラマチックなスタイルになり得るのだろうか?そこでガリアーノは、「リ{フォーム}」というコンセプトを取り入れた。
「リ{フォーム}」とは、単に何かに手を加えたり、アレンジしたりではないらしい。「リ{フォーム}」を支える技術は、フィジカル・ハッキングやデジタル・ハッキング、縮小と拡大、フィルタリング、スワッチング、スプライシングと、中には技術というより概念に近い独自のアプローチも多く、ゆえに「ザラ」のベーシックが、ガリアーノならではのドラマに昇華したようだ。
それぞれのアプローチは、ユニークだ。例えば「ザ・フリックス」と呼ぶ技術は、「フリック・ブック」と呼ぶパラパラ漫画に着想を得ているという。複数の衣服を重ね合わせ、一つのコートを思わせる視覚的なイメージを構築した。「ザラ」のコートに由来するネットドレスにフェイクファーの襟、袖とカフスなどを組み合わせた。この内側にさらにアイテムを重ねてスタイルを完成させている。
「ザ・シフト」と呼ぶ技法では、「ザラ」のアーカイブのシャツを元の3倍に拡大し、レザーコートのような表情を加えるフォイルプリントを施した。シャツ由来の軽やかさを残しつつ、コートのような存在感を手に入れた。こうしたアプローチは、直近の「メゾン マルジェラ」の特にクチュールに相当する“アーティザナル”ラインで培った概念的な実験の賜物だろう。
シンプルな商品も多数で自由自在
ガリアーノお気に入りのバッグは?
マイゼルによるモデルシューティングにも驚くが、1着1着の商品画像を見ると、また新たな驚きがある。もちろんジョーゼットやシフォンを幾重にも重ねたフリルトップスや、まるで完成したコートを解体して随所にフェイクファーをあしらったコート、バイアスカットにすることでガリアーノらしい流麗なラインに仕上げたドレス、パテント加工のボディコンシャスなパンツなど、普段の「ザラ」よりもデザイン性の高いアイテムも少なくない。
だが一方でジャケットやシャツ、ニット、ポロニットなどはシンプルで、「本当に、これであのドラマティックなスタイリングができるのか?」と勘繰ってしまうほどだ。
ドラマティックなスタイルに仕上げるポイントは、さまざまなモジュール的アクセサリー。つけ襟、つけ袖、ネックウォーマー、グローブ、そしてサテンのリボンが長く垂れ下がるブラトップなどを組み合わせることで、ガリアーノらしいルックに仕上げるのだろう。従前のガリアーノのスタイルは、ファッショニスタなブルジョワジーしか楽しめなかったかもしれないが、さすがは「ザラ」らしく、今回のコレクションはさまざまな人が、さまざまに楽しめそうだ。ガリアーノのアイコン的なパイレーツハットも、「ディオール」や「メゾン マルジェラ」では買いづらかったかもしれないが、「ザラ」ならハードルが下がるだろう。
ちなみにガリアーノのオススメは、ゴミ袋を思わせるサックバッグを、グラマラスに昇華させたリバーシブルバッグという。ストラップとメタルチェーンでハンドバッグ、ショルダーバッグ、バックパックという3通りのスタイルで楽しめる。
コレクションを見る限り、「ザラ」とは言え制約は少なく、ガリアーノのアイデアも存分に発揮できたようだ。きっと新しいクリエイションを楽しんだことだろう。と同時にこれは、インディテックス(ザラなどの親会社)の創業者アマンシオ・オルテガ(Amancio Ortega)の娘で、2022年4月1日付で会長に就任したマルタ・オルテガ・ペレス(Marta Ortega Perez)による、ファスト・ファッションブランドとして知られた「ザラ」のイメージ向上の一環でもある。ガリアーノらしいクリエイティビティと、一方である程度のベーシックと自由に楽しめるアクセサリーによる汎用性が同居したコレクションは、若き会長が目指す「ザラ」イメージ向上に寄与しそうだ。
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