毎朝9時までに行列に並ぶと食べられる⋯うさぎやカフェ「うさパンケーキセット1300円」にどらやきの名店の本気を見た朝(東洋経済オンライン)
44 分前

『マツコの知らない世界』(TBS系)にも出演した、チェーン店の外食モーニングをこよなく愛するライターの大木奈ハル子さん。連載「チェーン店最強のモーニングを探して」では、さまざまなチェーン店のモーニングをご紹介しています。
第162回は、「うさぎやカフェ」です。
飲食チェーンがひそかにしのぎを削っているジャンル、それが「モーニング」です。午前中の集客が弱い時間帯の売り上げを強化すべく、朝の数時間だけ提供される限定メニューの数々は、コスパ抜群かつ店の特色が強く表れ、どれも魅力にあふれています。
『マツコの知らない世界』(TBS系)にも出演した、チェーン店の外食モーニングをこよなく愛するライターの大木奈ハル子さん。連載「チェーン店最強のモーニングを探して」では、さまざまなチェーン店のモーニングをご紹介しています。
第162回は、「うさぎやカフェ」です。
飲食チェーンがひそかにしのぎを削っているジャンル、それが「モーニング」です。午前中の集客が弱い時間帯の売り上げを強化すべく、朝の数時間だけ提供される限定メニューの数々は、コスパ抜群かつ店の特色が強く表れ、どれも魅力にあふれています。
今回ご紹介するのは、東京・上野にある「うさぎやカフェ」。どらやきの名店として知られる「うさぎや」が手がけるカフェです。
そんな同店では、朝の時間帯にしか食べられない名物があります。それが、どらやきの生地を使ったパンケーキです。朝9時の開店に合わせて訪れると、すでに店の前には人の列。どうやら、ここでは「朝ごはんを食べる」という行為そのものが、ちょっとしたイベントになっているようです。
■朝に並んだ人だけが食べられる、うさぎやカフェの名物モーニング
うさぎやカフェは朝9時にオープン。訪れたのは平日ながら、8時45分の時点ですでに数人が並んでいました。午前8時50分をすぎると、さらに列が伸びていきます。
それもそのはず。うさぎやカフェのモーニングを食べられる権利を得るのは、毎朝9時までに来店していた人だけ。他では聞いたことがないシステムで、なんだか新鮮です。この日いたのは15人ほど。開店と同時に20席ほどの店内は、ほぼ満席になりました。
何がすごいって、席についただけで「朝から行列に並んだ人だけが食べられる、特別な朝食の権利を勝ち取った選ばれし者」になれた気分になれたこと。たかが朝ごはん、されど朝ごはん。早起きして、並んで、無事に席を確保したという小さな達成感が、朝食に上乗せされるのです。
■工場からできたてが届く! うさパンケーキセット1300円
注文できる朝メニューは1種類だけ。どらやきの生地を使った「うさパンケーキセット」税込1300円です。ドリンク付きで、以下の5種類から選べます。
・オリジナル焙煎コーヒー
(うさ餡みるく以外はおかわりOK)
注文後には、テーブルにあんとバターだけが乗った木皿が置かれます。パンケーキはまだ来ない。目の前にあるのは、あんことバターだけ。この状態で待たされると、否が応でも期待が高まります。
実はうさぎやカフェでは、どらやきの皮を焼いておらず、徒歩3分ほどの場所にあるうさぎや内の工場で焼いて、できたてをばんじゅう(業務用食品コンテナ)に入れて届けてくれるのです。
パンケーキが運ばれてくるまでの時間も、ただ待つだけではありません。スタッフから、できたての皮が届く仕組みを聞き、食べ方を教えてもらい、「こうするとシズル感が出ます」「影にならないように」なんて、SNSに投稿する写真をきれいに撮るコツまで丁寧に教えてくれるのです。
脳内で食べ方のイメージトレーニングを繰り返し、ワクワク待つこと10分ほど。いよいよパンケーキの登場です。
■どらやきの皮とあんこを、パンケーキとして再発見
ばんじゅうを抱えたスタッフが、そこから直接パンケーキを4枚取り出し、木皿に乗せてくれます。木皿を縦にすると、うさぎの顔の形になりました。う〜ん、芸が細かい! インスタ映えはバッチリです。
パンケーキのサイズはどらやきよりひとまわり大きめで、生地はどらやきと同じぐらいで薄め。片面焼きで、表面はこんがりとした焼き色でツヤツヤ、内側は淡い黄色でしっとりフワフワです。
まずは、パンケーキをひっくり返して、真ん中に発酵バターを乗せます。バターは室温に戻されていて、マーガリンよりも柔らかい。乗せると、焼きたてホカホカのパンケーキに、バターがじゅんわりと溶けて、生地に染み込んでいきます。
これを半分に折りたたんで、半月型にしてパクリ。焼きたてならではの香ばしさと、上品な甘みのある生地に、バターの塩気が加わり、口の中でふわりと広がります。生地はきめ細かく、舌触りもしっとりとなめらか。
■あんこが染み込む、焼きたてパンケーキ
つぎは、あんこを乗せていただきます。このあんこ、かなり水分量が多く、ゆるっと仕上がっているのに、味は濃厚。あんこの旨みと甘みがしっかり感じられます。
冷たい皮と硬めのあんこの、食べ慣れたどらやきとはちょっと違う、とろとろのあんこが染み込んだ温かいパンケーキ。懐かしさのなかに、新しいおいしさがあります。皮だけで食べたり、あんバターを乗せて食べたりと、ひと皿でいろいろな食べ方を楽しめるのも面白いところです。
いつもはあんこが主役のどらやきを、パンケーキという形で提供することで、「どらやきって、こんなに皮がおいしかったんだ」と気づかせる、見事なブランディングです。朝から並ぶことも、パンケーキができあがるまでの待ち時間さえも、楽しみに変換する、心をつかむ演出の見事さも相まって、大満足で食べ終えたのでした。
■「並ぶ時間」まで商品にしてしまう、うさぎやカフェ
それにしても、よく考えられています。「並ぶ→待つ→撮影する→食べる→投稿する」という面倒ごとが、楽しみの体験にすり替えられ、うさぎやカフェの魅力として設計されています。
限定感で人を集め、待ち時間まで楽しませ、SNSで拡散したくなる写真を撮らせ、最後には「うさぎや、好きだな」と思わせる。食べ終わったときには、すっかりうさぎやのファンになっている自分に気づきます。
しかも、最後に待っているのは、裏切らないおいしさ。朝早く起きて、行列に並んで、料理を待った。そんな「がんばった後のご褒美」だから、さらにおいしさはマシマシです。
■「おいしい朝ごはん」だけでは説明しきれない老舗店が提供するモーニング
どらやきの老舗が、どらやきをそのまま売るのではなく、パンケーキという新しい形でその魅力を再発見させてくれる。しかも、その体験自体がまた次のお客さんを呼び込んでいく。「おいしい朝ごはん」だけでは説明しきれない、よくできたモーニングです。
「皮だけでこんなにおいしいんだから、どらやきもさぞやおいしかろう」と、うさぎやに立ち寄ることを決意する朝です。
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