感じのいい人が「タクシーに乗った時」に運転手にかける〈意外な言葉〉(ダイヤモンド・オンライン)
44 分前

日々さまざまな乗客と向き合うタクシードライバーは、クレーマーやカスハラ客に悩まされることもしばしばだ。だが、全ての乗客が悪質なわけではない。細かな気遣いができる「感じのいい乗客」に出会ってホッとすることもある。今回は、そうした乗客の「粋な計らい」の実態を解説する。乗客に「お釣りはいりません」と言われたときのドライバー側の本音も明かす。(現役タクシードライバー/物流ライター 二階堂運人)
● 「感じのいい乗客」が タクシー運転手に伝える「意外な言葉」
ある雨の日。後部座席に乗ってきた男性が、傘の水滴をしっかり振り払ってから畳み、足元に置いた。ほんの数秒の動作だが、こういう小さな振る舞いは意外と記憶に残るものだ。
タクシーという狭い空間では、乗客のちょっとした行動がドライバーの心理状態を左右する。
前回は、運転手を困らせる「感じの悪い乗客」について書いた。車内で電話に熱中し、あごの動きで行き先を指示する人。「ルートはお任せします」と言ったのに、選んだ道にクレームを付ける人。そうした人々の言動に、ドライバーの心が傷つくこともある。
今回はその反対に、乗せていてホッとする「感じのいい乗客」の話をしてみたい。
皆さんが「感じのいいタクシー客」と聞いて思い浮かべるのは、どんな人だろうか。チップを払ってくれる乗客。話が弾んで目的地まであっという間に着いてしまう乗客。そんなイメージを持つ人は多いかもしれない。
だが、ドライバーが「このお客さん、いい人だな」と感じるのは、そうした目立つ振る舞いではなく、些細な気遣いをしてくれる人だ。
例えば、車内に備え付けてある、スマートフォンの充電ケーブルを使ったあとに、元の場所に戻してくれる人。夏の暑いとき、後部座席にあるサーキュレーターの風量を調節する前に「少し強めても大丈夫ですか」と一声掛けてくれる人。
ちょっと意外かもしれないが、どちらも「自分以外の人もこのタクシーに乗る」という気遣いをしみじみと感じる。
シートベルトもそうだ。こちらからお願いしなくても自発的に締めてくれるお客さんからは、同乗者としてきちんとルールを守ろうとする配慮を感じ、ありがたい気持ちになる。
言葉遣いも同じだ。「お願いします」「ありがとうございます」。特別な表現ではないが、言葉遣いが丁寧なお客さんが相手だと、こちらも自然と気持ちよくやり取りできる。
丁寧な言葉を掛けてくれるだけでなく、そのあとに「気をつけて」「お疲れさまです」と、さらに一言添えてくれる人もいる。深夜なら「この時間まで大変ですね」と声を掛けられることもある。たったそれだけで、ドライバーの疲れは少し軽くなる。
日々さまざまな乗客と向き合うタクシードライバーは、クレーマーやカスハラ客に悩まされることもしばしばだ。だが、全ての乗客が悪質なわけではない。細かな気遣いができる「感じのいい乗客」に出会ってホッとすることもある。今回は、そうした乗客の「粋な計らい」の実態を解説する。乗客に「お釣りはいりません」と言われたときのドライバー側の本音も明かす。(現役タクシードライバー/物流ライター 二階堂運人)
● 「感じのいい乗客」が タクシー運転手に伝える「意外な言葉」
ある雨の日。後部座席に乗ってきた男性が、傘の水滴をしっかり振り払ってから畳み、足元に置いた。ほんの数秒の動作だが、こういう小さな振る舞いは意外と記憶に残るものだ。
タクシーという狭い空間では、乗客のちょっとした行動がドライバーの心理状態を左右する。
前回は、運転手を困らせる「感じの悪い乗客」について書いた。車内で電話に熱中し、あごの動きで行き先を指示する人。「ルートはお任せします」と言ったのに、選んだ道にクレームを付ける人。そうした人々の言動に、ドライバーの心が傷つくこともある。
今回はその反対に、乗せていてホッとする「感じのいい乗客」の話をしてみたい。
皆さんが「感じのいいタクシー客」と聞いて思い浮かべるのは、どんな人だろうか。チップを払ってくれる乗客。話が弾んで目的地まであっという間に着いてしまう乗客。そんなイメージを持つ人は多いかもしれない。
だが、ドライバーが「このお客さん、いい人だな」と感じるのは、そうした目立つ振る舞いではなく、些細な気遣いをしてくれる人だ。
例えば、車内に備え付けてある、スマートフォンの充電ケーブルを使ったあとに、元の場所に戻してくれる人。夏の暑いとき、後部座席にあるサーキュレーターの風量を調節する前に「少し強めても大丈夫ですか」と一声掛けてくれる人。
ちょっと意外かもしれないが、どちらも「自分以外の人もこのタクシーに乗る」という気遣いをしみじみと感じる。
シートベルトもそうだ。こちらからお願いしなくても自発的に締めてくれるお客さんからは、同乗者としてきちんとルールを守ろうとする配慮を感じ、ありがたい気持ちになる。
言葉遣いも同じだ。「お願いします」「ありがとうございます」。特別な表現ではないが、言葉遣いが丁寧なお客さんが相手だと、こちらも自然と気持ちよくやり取りできる。
丁寧な言葉を掛けてくれるだけでなく、そのあとに「気をつけて」「お疲れさまです」と、さらに一言添えてくれる人もいる。深夜なら「この時間まで大変ですね」と声を掛けられることもある。たったそれだけで、ドライバーの疲れは少し軽くなる。
● タクシードライバーがホッとする 「感じのいい乗客」の振る舞い
「感じのいい乗客」の言葉で、記憶に残っているものは他にもある。
配車アプリ経由の乗客の中には、「マンションの裏口までお願いします」「エレベーターが遅いので少し待ってください」と、詳しい情報を事前に伝えてくれる人がいる。
ドライバーからすれば、その一言があるだけで、到着してからの動きがイメージできる。「お客さんはまだ来ないのかな」「どこで待っているんだろう」といった余計な迷いもなくなる。
また、普段は急ぎの客が多いことから、タクシードライバーは「乗客はみんな急いでいるものだ」と思い込みがちだ。そんな中で、乗ったときに「急いでいませんので」と言ってくれる乗客に出会うと、少しホッとする。
実際は、そう言われたからといって、極端にゆっくり走るわけではない。それでも「急がなければ」と焦る気持ちがなくなるだけで、運転する側の余裕は随分と違う。信号待ちをしているときも、後ろから急かされているような無言の圧力を感じない。それだけで、車内の空気が柔らかくなる。
渋滞しているときに「これは仕方ないですね」と言ってくれる人や、工事や事故の影響で遠回りせざるを得ないときに「わかりました、任せます」と納得してくれる人も同様だ。
もちろん、急いでいるお客さんや、渋滞に苛立つお客さんが悪いわけではない。でも、こうした一言を掛けてくれるだけで、運転する側の安心感は大きく変わってくる。
同様に、「次の信号を右です」「あのコンビニの手前で」といったように、明確な目印を使って行き先を伝えてくれるお客さんにも助けられている。
まだ目印が見えていないのに「次を曲がって、その先を左、そのあと大きい道に出たら右です」と前もって指示されることもあるが、特に土地勘のない場所では、プロのドライバーといえども、目の前の運転に集中しながら先々の曲がり方まで把握するのは難しいのだ。
さらに、目的地に着いた後、自分で座席のまわりを確認して、忘れ物がないか確かめてから降りてくれる人もいる。こういう何気ない配慮も、あとでドライバーが車内を探す手間を減らしてくれる。
会計を終えて、ふっと気が抜けるタイミングだからこそ、降車時の振る舞いには、その乗客の人柄が表れるような気がする。
● 客に「お釣りはいりません」と言われた タクシードライバーの本音
ではここで、冒頭で述べた「チップ」について、筆者の本音を明かしたい。会計のあとに、小銭を「取っておいて」と差し出された瞬間、タクシードライバーが何を思うのかをお伝えしよう。
一般的に、チップは「サービスへの感謝」という意味を持つとされる。実際に、そうした目的でチップを払ってくれる外国人観光客もいる。
日本にはチップの文化がないが、渡してくれる日本人客が全くいないわけではない。
大きな荷物を運ぶのを手伝ったときや、接客を喜んでもらえたときに、「お礼です」と運賃を多めに払ってくれる乗客も存在する。「ありがとう」の気持ちを感じるので、こうした気遣いはとても嬉しいものだ。
また、短距離のお客さんが「近くて申し訳ない」という気持ちからか、細かいお釣りを置いていってくれることもある。
しかし本音を言えば、こうした例とは対照的に、お金を渡されたのにモヤモヤする場合もある。
例えば、会計が面倒だったり、急いでいたりといった理由で、「お釣りはいいです」と言う人がいる。深夜にワンメーターだけ乗ってきた酔客が、小銭を数える手間を惜しんで、千円札をそのまま渡してくることもある。お釣りのやり取りを省略するためだけに、「もういいや」と受け取りを拒む人も多いのだ。
また、大きな荷物を運ぶなど、特別なサービスを提供したわけではないのに、なぜかチップをくれる人もいる。必ずしも「感じがいい」とは言えない、マウントを取るような態度のお客さんからチップをもらうこともある。
もちろんありがたいのだが、そうしたとき、筆者は釣銭置きに残されたチップを見ながら「これは自分に向けられたものなのだろうか?」と深読みしてしまう。
数多くの乗客と接していると、「何かいいことをしたい」「金銭的な余裕を誇示したい」といった思いを抱えている人を、どうしても感じ取ってしまうのだ。言い換えると、ドライバーへの感謝を示したいというよりも、渡す本人が、その行為によって満足感や優越感を得たいように思えることがある。
実際のところは本人に聞いてみないと分からないし、筆者がうがった見方をしているだけかもしれない。だが、「施し」のような感覚でチップをいただいても、手放しでは喜べないのが正直なところである。
同じ「多く払う」という行為でも、その意味合いは乗客によって全く違う。感謝の表れなのか、お釣りの受け取りが面倒なのか、それとも他に何か意味があるのか。お金を手渡す際の何気ない振る舞いからも、ドライバーには乗客の気持ちや人柄が伝わってくる。
● 「感じのいい乗客」とは 結局どんな人なのか
こうして振り返ってみると、筆者の印象に残っている「感じのいい乗客」は、多額のチップを手渡すなど、特別なことをしてくれる人ではない。
シートが濡れないように傘を畳む。充電ケーブルの使用後に元に戻す。降車時に忘れ物がないか確認する。こうした小さな配慮を欠かさない人こそ、本当に「感じのいい人」だと言える。
余談だが、孔子の言葉に「己の欲せざる所は、人に施すこと勿(なか)れ」というものがある。「自分がされて嫌なことは、他人にするべきではない」という意味だ。
乗客とドライバーの双方が、この意識を持つことが、お互いにとって気持ちのいい移動時間につながるのだと思う。
狭いタクシーの車内では、ちょっとした言葉や動作の意図が、思っている以上に相手に伝わる。筆者もそのことを忘れずに乗客と向き合っていきたい。
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