不要論もある居酒屋のグレーゾーン慣習「お通し」への理解 「昨今もそんなに値上がりしてない。うまいものもある」の声 ただし“残念すぎるお通し”はご勘弁(マネーポストWEB)
54 分前

居酒屋で店と客の間でトラブルになりがちなのが「お通し(突き出し)」だ。特に海外では馴染みの薄い慣習だけに、外国人観光客との間で「こんなもの頼んでいない」「いや、決まりです」と店と客の間でひと悶着があることも。インバウンド客も増えてきているなか、「不透明な慣習は廃止すべき」といった声もあるが、かつてお通しというシステムに否定的だったネットニュース編集者の中川淳一郎氏は、「そこまで目くじらを立てないでいいのでは」と最近感じるようになったという。なぜお通しに理解を示すようになったのか。居酒屋通い歴33年の中川氏が綴る。
私も過去に当サイト記事〈居酒屋の「お通し」「突き出し」に賛否、あるべき姿を考える〉で、お通しシステムに異議を呈し、「謎の煮物(400円)」や「麻雀牌大の厚揚げ煮2枚(500円)」など残念すぎるお通しを紹介してきました。この記事は2017年のものですが、現在もお通しは安い店で300円、ボリュームゾーンは400~500円です。物価高の中、各種メニューは値上がりしているのに、馴染みの店ではお通しの値上げはとんと経験がありません。高くても600円です。
居酒屋としてお通しは売上を確保するためにも重要なもの。実質的にはテーブルチャージではありますが、お酒を頼んだ後に、注文した料理が届くまでにすぐつまみが出てくるのはありがたい。店からすれば、ただテーブルチャージを取るだけでは味気ない、お酒を頼んでくれる客へのサービスという側面もあるでしょう。
元々飲食店の経営者や従業員の知人は多かったですが、私自身がカフェ兼バーでバイトをするようになってから、より飲食店の経営状況について詳しく話を聞く機会が増えました。そのため、お通しへの違和感が減り、理解を示せるようになったのかもしれません。
元々お通しへの違和感を覚えたのは、2000年代前半に某チェーン居酒屋で従業員が巨大な業務用ザーサイと、業務用ラー油漬け豆モヤシの袋から小鉢に入れている様子を見たからです。我々は2人だったので、工夫して2種類出してくれたのですが、萎えました。今調べたら業務用の1kgのカットザーサイには498円のものがあり、1kgの豆モヤシは992円です。多く見積もっても30gしか入っていないわけで、原価はそれぞれ15円、30円です。コレに500円を徴収されたので不満を持ちました。
しかし、その後、レベルの高いお通しにも出会うようになり、500~600円のものでも納得できるようになったのです。300円だったらザーサイやカニカマとキュウリとワカメの酢の物や、業務用のひじき煮が出てきて「まぁ、そんなもんか」と納得できる。
500円クラスになると、さすがに袋を開けただけではなく、牛スジ煮や肉ジャガが出てくることが多い。そこでマヨネーズまみれのマカロニとキュウリとニンジンが出てくると残念な気持ちになる。これは300円か400円であってほしかった……。
ただ、店の側も時に発生するお通しを巡るいざこざを通して「最低限、客が納得するレベルのものを出さなければならない」というのは十分分かっているんですよ。300円だと業務用の袋を開けただけorキュウリやワカメなど安くてあっさりした食材を使ったもの。400円だとチクワとコンニャクのピリカラ煮、500円だと肉類や魚の南蛮漬けなども入った自家製……等々。
そして、私自身、少し高いお通しを楽しみにしている居酒屋も2軒あります。一軒は600円なのですが、とにかく店長が選び抜いた絶品の刺身が出てきます。同じ値段で「お通し刺身追加」すらできるほど、客から高い評価を得ている。サーモンやシマアジやマグロやカンパチなど、日によって変わりますが、とにかくウマい刺身を出す店として評判です。その日の絶品刺身を目当てに来る客もいるんですよ。
私が現在バイトをするカフェ兼バーではお通しはありません。また、居酒屋であっても酒を飲まない人にはお通しをつけなかったりすることもあります。日本の飲食業界のグレーゾーン慣習のようにも見えるお通しですが、とにかく20年前と比べても値上げが顕著ではないうえに、質の面でも向上してきていると、居酒屋通い歴33年の私は思います。
外国人客が馴染みのないお通しに違和感を持つのは仕方ないことだと思いますが、アメリカにもチップ制度があるわけで、「ここは日本だ!」で押し通してもいい気がするんですけどね。「麻雀牌大の厚揚げ煮2枚(500円)」のような、あまりにも残念なお通しには勘弁いただきたいところですが。
【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)/1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は『それってホントに「勝ち組」ですか? 現代格差の読み解き方』(鹿砦社)。
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