忙しい中でチームメンバーのキャリア開発をいかに支援すべきか(DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー)
43 分前

■忙しい中でチームの成長を支援する難しさ
チームは疲弊している。レイオフの波、地政学的な不安、そしてAIがもたらす不確実性の時代にあって、成果を出し続けるプレッシャーは大きく、他のことに割く余裕はほとんど残されていない。こうした状況下で、さらにキャリア開発について考えるよう求めるのは、現実的ではないように感じられる。
しかし、チームの成長を支援することは、リーダーにとって本質的な職務だ。では、どうすれば従業員が短期的な業務だけでなく、先を見据えたキャリアについて考えられるようにできるのか。キャリア開発を「的外れ」ではなく「意味のあるもの」として捉えてもらうにはどうすればよいのか。そして、リーダー自身も多忙を極める中で、こうした対話の時間をどのように捻出すればよいのか。
多くの従業員は、新たなスキルを身につける必要性を理解している。問題は、目の前の業務に追われ、そのための余地がほとんどない点にあると指摘するのは、キャリア開発コンサルティング会社アメイジング・イフの共同創業者兼CEOのヘレン・タッパーだ。タッパーには、Learn Like a Lobster(未訳)などの著書がある。
「人々は学習の重要性を認識しているが、忙しすぎると感じている」とタッパーは言う。「時間もなければ、どこから手をつければよいのかもわからない。その結果、日常業務を優先して自身の成長は後回しにしてしまう」。自信の問題も大きい。現在求められている学習の多くは新しい領域であり、その典型がAIだとタッパーは指摘する。「多くの人は依然として学習は学校で行うものと考えており、いまの仕事に組み込まれるものだとは捉えていない」
一方で、リーダー自身も同様のプレッシャーと不確実性に直面している。それでもなお、部下はリーダーを頼りにしていると、ペンシルバニア大学ウォートンスクール教授のマシュー・ビッドウェルは言う。チームに伝えるべきメッセージは明快だ。「何が起きているのかを常に把握し、後れを取ることなく最前線に立ち続けることは、これまで以上に重要だ。そして、そのために必要なスキルやツールを身につけられるよう、できる限り支援する」。以下はその出発点だ。
■はしごを上ることより学習に焦点を当てる
キャリアラダー(キャリアのはしご)という発想には一定の安心感がある。出社し、懸命に働き、段階的に上っていく。しかし、その考え方は魅力的であるものの、すでに時代遅れだとタッパーは言う。「それは多くの人にとって現実ではない」。キャリアは上昇するだけでなく、横方向にも動く。昇進もあれば、レイオフもある。ビッドウェルは「20年間の計画を立て、それを実行できたと振り返れる人はほとんどいない」と言う。「チャンスは予測不能な形で訪れる」
キャリアの行方を完全にコントロールすることはできない。テクノロジーの進化が速すぎるからだ。しかし、無力であるというわけではない。「リーダーができるのは、各メンバーが自身の成長を主体的にコントロールできるよう支援することだ」とタッパーは言う。「学習力の高い人はみずから機会を生み出す。そうでなければ、取り残されるおそれがある」と率直に伝えるべきだ。
■近い将来から始める
タッパーによれば、キャリアに関する対話を避けるシニアリーダーもいる。将来の志向に踏み込みすぎると、転職を意識させてしまうのではないかと懸念するためだ。しかし、実際は逆だ。「自分が大切にされ、耳を傾けられ、支援されていると感じる人ほど、組織に留まる傾向が強い」とタッパーは言う。
不確実性が高い状況でも、短期的には議論できる材料は十分にあるとビッドウェルは指摘する。「2年程度のスパンであれば、相当の確度で語れるが、10年先については自信を持って語れない」。多くの場合、次の役割に進むために必要な中核スキルは大きく変わらないため、リーダーとして取り組むべき余地は十分にあるのだ。たとえば、チームのメンバーがプロダクトマネジメントへの転身を望んでいるとする。近年、プロダクトマネジャーには単なる管理ではなく、プロダクトを実際に構築する力も求められるようになっている。しかし、「戦略、顧客、組織を理解するという重要スキルは、引き続き有効であり続ける可能性が高い」とビッドウェルは述べる。
■視野を広く持たせる
長期的な展望を持つことは、より難しい。「テクノロジーがどのように、どこへ進化するのかは誰にもわからない」とビッドウェルは言う。将来的に自動化されてしまう可能性のあるスキルに過度に投資することは避けるべきだ。彼は、単一のキャリアパスに固執するのではなく、部下が複数のシナリオで考えられるようにすることを勧める。自社の業界で需要が伸びている領域はどこか、逆に縮小している領域はどこか。目標は、部下がどこにエネルギーを注ぐべきかについて、根拠のある推測を立てられるように支援することだ。「不確実性の高い時代において、過度な専門特化はそれ自体がリスクとなる」
また、リーダー自身も模索している最中である以上、すべてを知っているかのように振る舞いたくなる衝動を抑えるべきだとタッパーは言う。「答えを提示することが最も有用に思えるかもしれない。しかし、あなたの役割は部下のキャリアを設計することではなく、その発展を支援することだ」
■一人ひとりに合わせて支援する
タッパーは、チームの各メンバーと個別に向き合い、現在の役割で必要な学習、パフォーマンスを向上させる学習、将来の目標に到達するために必要な学習を整理することを勧める。「多くの人は、いまの職務に必要なことしか学ばない。それでは成長の幅が制限される」
たとえば、カスタマーインサイト分野への転身を目指すプロジェクトマネジャーがいるとする。資格取得に取り組んでいる場合でも、その先を考えるよう促す。定量調査はどこで学べるか。ビジネスモデルのイノベーションを理解するには何が必要か。製品の市場投入について学ぶために、どの企業を追うべきか。「現時点では直接関係がないように見える学習にも取り組むことを認め、そのための時間を与えることで、本人の意欲が高まる」
■学習を「上乗せ」せず「組み込む」
チームに新たな学習を求める前に、まず業務負荷を軽減すべきだとビッドウェルは助言する。「私たちは常により多くの仕事を求めがちであり、不要な業務は取り除くべきだ」。余白を与えることが重要だ。「リーダーが学習日を設定しても、当の本人は仕事の山が気になって集中できない」とタッパーは指摘する。
タッパーが提案するのは、日常業務の中にすでにある学習機会に目を向けることだ。たとえば、より広いビジネス領域に挑戦し、リーダーシップの存在感を高めたいメンバーがいるとする。その人のスケジュールを見れば、顧客イベントやプレゼンなど、役割を拡張できる場面が見つかるはずだ。会議の冒頭を任せる、質疑応答をリードさせる、顧客対応後のデブリーフィングを担当させるといった機会を提供する。「終了後には、ともに振り返る時間を設けることが重要だ」とタッパーは言う。
■みずから実践して示す
チームはリーダーの行動を手本にすると、タッパーは言う。「キャリアや学習の重要性を説きながら、自分が実践していなければ、それは言葉だけに終わる」。形式にこだわる必要はなく、現在読んでいるものや取り組んでいるテーマを共有する。思考を揺さぶられた対話について語ったり、失敗とそこからの学びを率直に共有したりすることも有効だ。「学習の形はさまざまだが、あなた自身が実践している姿が見えることが重要だ」
とりわけAIに関しては、その重要性が増すとビッドウェルは指摘する。「自分は役員室でクロードを試しながら、他のメンバーには達成不可能な目標を課すのは都合がよい話だ」。成功だけでなく試行錯誤も共有すべきである。「時間をかけたのにうまくいかなかったが、それでもこれは有効だった」と率直に語る。そのような姿勢が信頼を生むのだ。「同じ立場で取り組んでいることの証になる」とビッドウェルは言う。
■覚えておくべき原則
・キャリアについての対話は近い将来を軸に据え、持続性の高いスキルにチームが焦点を合わせられるようにする。
・各メンバーと対話をし、現在必要な学習と将来の成長に役立つ学習を明確にしたうえで、それに取り組むための時間と機会を与える。
・自身のキャリア開発についてもオープンにし、何を学び、何に取り組んでいるかをリアルタイムで共有する。
■やるべきでないこと
・キャリアの議論を次の昇進の話に限定すること。学習と成長に軸を置く。
・環境の変化が激しい中で、狭い専門性へと誘導すること。応用可能なスキルの獲得を促す。
・理想的な学習機会を待つこと。チームメンバーの日常業務の中にその機会を意図的に組み込む。
"Supporting Your Employees' Career Growth When Everyone Is Overwhelmed," HBR.org, May 20, 2026.
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