なぜミネベアミツミはAI全盛期も強い?元機関投資家が解き明かす「ベアリング」の稼ぐ力(LIMO)
50 分前

データセンター向けビジネスやAI関連銘柄として、株式市場から注目を集めるミネベアミツミ。動画の聞き手も、同社をAIやデータセンター関連で盛り上がっている銘柄の一角だと、ぼんやり受け止めていたと話します。ところが、今期予想の営業利益の半分以上を稼ぐのは、機械の滑らかな動きを支える「ベアリング」という伝統的な部品です。AIが話題になる会社の利益は、どこから生まれているのでしょうか。この疑問について、元機関投資家の泉田良輔氏が事業構造と決算をもとに解説します。
※編集部注:外部配信先ではハイパーリンクや図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
データセンター向けビジネスやAI関連銘柄として、株式市場から注目を集めるミネベアミツミ。動画の聞き手も、同社をAIやデータセンター関連で盛り上がっている銘柄の一角だと、ぼんやり受け止めていたと話します。ところが、今期予想の営業利益の半分以上を稼ぐのは、機械の滑らかな動きを支える「ベアリング」という伝統的な部品です。AIが話題になる会社の利益は、どこから生まれているのでしょうか。この疑問について、元機関投資家の泉田良輔氏が事業構造と決算をもとに解説します。
※編集部注:外部配信先ではハイパーリンクや図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
●「究極の部品メーカー」を目指した経営統合
ミネベアミツミという企業を理解する上で欠かせないのが、その成り立ちです。同社は、2015年12月に「ミネベア」と「ミツミ電機」が経営統合の基本合意を発表し、2017年4月に株式交換の効力発生を予定していたという経緯で誕生しました。
統合発表時の資料によれば、両社はアナログとデジタルの融合により「究極のエレクトロ メカニクス ソリューションズ プロバイダー」を目指すという目標を掲げていました。売上高1兆円、営業利益1,000億円強という世界でも類のない総合部品メーカーになることを掲げた統合でした(達成時期は資料に記載がありません)。
●入力から出力までを一気通貫で担う事業構造
泉田氏は、統合のニュースを聞いた当時、やっていることが全然違う会社がくっつくという印象だったと振り返ります。そのうえで、この統合がもたらした事業領域の補完関係に注目します。
統合前のミネベアは、ベアリングやモーターといった「動くもの(メカ)」を扱う出力側の部品に強みを持っていました。一方のミツミ電機は、コネクターやスイッチ、センサーといった「電子信号(エレクトロニクス)」を扱う入力・変換側の部品を得意としていました。
泉田氏はこの構造について、次のように解説します。
「ミネベアがメカでミツミが電子みたいな」「事業ポートフォリオからすると結構ばらけてていいな、そんな見方ができますよね」
入力から出力までの部品を網羅することで、顧客に対して総合的な提案が可能になります。
「仮にお客さんが一緒だとソリューションで提案できるし、行ったことないお客さんだったら『あのお客さん紹介してよ』みたいな話は簡単に想像つくじゃない」
このように、入力から出力までを両社で分担することで、顧客ごとに提案の幅が広がる補完関係が生まれたと泉田氏は見ています。
●売上最大を誇る「セミコンダクタ&エレクトロニクス」
ミネベアミツミの事業は、現在大きく4つのセグメントに分かれています。その中で最も大きな売上規模を誇るのが、「セミコンダクタ&エレクトロニクス(SE)」セグメントです。
同セグメントは、半導体や光デバイスなどを扱っており、通期の売上予想は5,300億円に上ります。AIサーバー向けのEEPROM(書き換え可能なメモリ)などもこのセグメントに含まれており、データセンター需要の拡大を背景に注目を集めている領域です。
●利益の半分以上を稼ぐ「プレシジョンテクノロジーズ」
一方で、利益の観点から見ると全く異なる景色が広がります。全社の営業利益予想1,200億円のうち、700億円(約58.3%)を稼ぎ出しているのが「プレシジョンテクノロジーズ(PT)」セグメントです。
PTセグメントの主力製品は、機械の摩擦を減らして滑らかな回転を助ける「ボールベアリング」です。データセンター向けサーバーの冷却ファンや、航空宇宙産業向けのロケット・人工衛星など、あらゆる「動く機械」に使われる部品です。
他にも、モーターやバッテリー保護モジュール、センサーを扱う「モーター・ライティング&センシング(MLS)」や、自動車向け部品を主力とする「アクセスソリューションズ(AS)」があり、多様な産業に製品を供給しています。売上の柱と利益の柱が異なるセグメントに分かれていることは、同社の事業構造を測る重要なモノサシとなります。
●第1四半期の大幅な増収増益
直近の業績に目を向けると、同社のビジネスが好調に推移していることがわかります。2027年3月期第1四半期の決算では、売上高が前年同期比+16.3%の4,266億円、営業利益が同+50.9%(約51%増)の263億円と、大幅な増収増益でした。
決算説明会では、プレシジョンテクノロジーズセグメントと空冷ファンが期初計画を大きく上回る水準で推移していると説明されました。
●会社が保守的な予想を据え置く理由
第1四半期が好調だったにもかかわらず、会社側は通期の売上高予想(1兆6,900億円)と営業利益予想(1,200億円)を期初から据え置きました。最終利益のみ830億円から870億円へ上方修正されましたが、前期実績(990億円)と比較すると-12.2%の減益予想となっています。
決算資料によれば、この減益予想の背景には、前期の最終利益に金融資産の公正価値評価による特殊要因(約252億円)が含まれていた事情があります。この特殊要因を除いた実質ベースで比較すると、今期の870億円は約17.8%の増益にあたります。
聞き手が、通期予想はかなり保守的な数字に見えるがどう見たらよいのかと尋ねると、泉田氏は決算説明会での会社側の回答を取り上げます。会社側は、過去に期初の上方修正後に計画を達成できず、市場から厳しい評価を受けた経験があるため、極めて保守的な考え方から予想を据え置いたと説明しています。
泉田氏はこのスタンスについて、機関投資家の視点から次のように評価します。
「リスクを取って説明してくれる方がこっちからするとやりやすい」
もっとも、会社が保守的だと説明している以上、そういう会社だと理解して分析することも大事なポイントだと泉田氏は話します。実際、営業利益のコンセンサス(アナリスト予想の平均値)は、IFISの画面(2026年9月24日時点)で約1,234億円と、会社予想の1,200億円を上回っています。
●データセンターを支えるAIサーバー向けビジネス
ミネベアミツミの中長期的な成長を語る上で欠かせないのが、AIサーバー向けのビジネスです。同社は、サーバーの冷却に使われるファンモーターやベアリングなどを供給しています。水冷システム向けでは、バルブやポンプ、漏水センサーなどの新製品について、顧客の開発状況に合わせて商談が進んでいる段階です。
会社計画によれば、AIサーバー関連の売上高は2026年3月期の1,100億円から、2029年3月期には2,000億円へと拡大する見込みです。これは年平均成長率(CAGR)にして約22%という高い成長を見込む計画です。
特に注目される水冷システムについて、会社側は「水冷市場の立ち上がりは空冷に比べて時間差があることから、現時点では通期業績予想にはあまり織り込んでおりません」と説明しています。泉田氏はこの回答を次のように読み解きます。
「まだ見通しが立たないものは織り込んでいないけど、いろいろ順調に進んでいるよということを言っております」
●長い目で見据えるヒューマノイドと航空宇宙
次なる成長の柱として期待されているのが、ヒューマノイド(人型ロボット)向けのビジネスです。ロボットの関節には多数のベアリングやモーターが使用されるため、同社の強みが直接的に活きる領域です。動画では、売上が立ち上がるのは2029年3月期ごろからとされ、聞き手は、この分野はもう少し長い目で見る必要があるとまとめています。会社の計画では、2035年3月期に標準で1,000億円、上振れケースで2,000億円とされています。
また、航空宇宙分野も重要なテーマです。人工衛星やロケット向けのベアリングなどが該当します。聞き手が、航空宇宙は成長投資分野として注目が集まりやすいと指摘したのに対し、泉田氏は、売上よりも技術力のアピールとしての意味が大きいのではないかと見ています。なお、決算資料で確認できる航空宇宙サブセグメントの今期売上予想は825億円で、全社の約5%にあたります。
ミネベアミツミは、ベアリングという利益の柱を持ちながら、AIサーバーやヒューマノイドといった最先端の成長テーマにも深く関わっています。しかし、その事業領域の広さゆえに、投資家にとっては全体像が掴みにくい側面もあります。
泉田氏も、この企業の分析の難しさを次のように指摘します。
「それぞれやってることは分かるんだけど、分析って意味ではすごく難しくて」
多岐にわたる事業の中で、今後の成長を測る上で最も重要なポイントはどこにあるのでしょうか。泉田氏は、AIサーバー向けビジネスの成否を握る根本的な要因に目を向けます。
「ハイパースケーラーの設備投資をもう注意深く見るしかない」
巨大IT企業(ハイパースケーラー)によるデータセンターへの設備投資動向が、同社の成長シナリオを大きく左右すると考えられます。
一方で、自動車向けのアクセスソリューションズ(AS)セグメントが自動車生産台数の影響を受けたり、電子部品が半導体の市況サイクルに影響されたりと、AI以外の事業環境にも目を配る必要があります。複雑な事業構造を持つ企業だからこそ、単一のテーマだけで判断するのではなく、営業利益1,200億円のうち700億円を占めるベアリング事業の堅調さと、AIサーバー向け売上を1,100億円から2,000億円へ伸ばす計画の進捗を分けて確認することが、投資判断では重要になると考えられます。ただし、動画では自動車向けや半導体サイクルの影響について具体的な数値までは示されておらず、この点は別途確認が必要です。
本記事は投資を推奨するものではなく、投資判断はご自身の責任で行ってください。
・ミネベアミツミ株式会社「2027年3月期 第1四半期決算短信」(2026年8月5日)
・ミネベアミツミ株式会社「2027年3月期 第1四半期 決算説明会資料」(2026年8月5日)
・ミネベアミツミ株式会社「2027年3月期 第1四半期 決算説明会 質疑応答要旨」(2026年8月5日開催分)
・ミネベアミツミ株式会社「2027年3月期 第1四半期 財務補足資料」(2026年8月14日)
・ミネベア株式会社・ミツミ電機株式会社「経営統合に向けた基本合意の締結について」(2015年12月21日)
・YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
各資料の入手先: ミネベアミツミ株式会社 IRライブラリ
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