1300日超の収容で外国人が「うつ病や自殺未遂」…一審「違法」から一転、高裁が「120万円の賠償命令」を取り消した理由とは(弁護士JPニュース)
41 分前

入管施設に長期間収容された外国人2名が、収容は国際人権法に違反する「恣意的な拘禁」だったとして国に損害賠償を求めた訴訟で、東京高裁は9月30日、一審判決を取り消し、原告の請求を棄却した。
一審の東京地裁は、原告らの心身の状態が悪化していた時期の収容は違法だったと認定。原告1名につき60万円、計120万円の支払いを国に命じていた。
しかし東京高裁は、収容や仮放免の判断については入管側に広い裁量があるとし、原告らの収容について違法性は認められないと判断。
判決後の会見で原告の弁護団は高裁判決を批判し、最高裁に上告する方針を示した。
入管施設に長期間収容された外国人2名が、収容は国際人権法に違反する「恣意的な拘禁」だったとして国に損害賠償を求めた訴訟で、東京高裁は9月30日、一審判決を取り消し、原告の請求を棄却した。
一審の東京地裁は、原告らの心身の状態が悪化していた時期の収容は違法だったと認定。原告1名につき60万円、計120万円の支払いを国に命じていた。
しかし東京高裁は、収容や仮放免の判断については入管側に広い裁量があるとし、原告らの収容について違法性は認められないと判断。
判決後の会見で原告の弁護団は高裁判決を批判し、最高裁に上告する方針を示した。
イラン国籍のサファリ・ディマン・ヘイダーさん(56)と、トルコ国籍のデニズさん(46)は、それぞれ祖国での迫害から逃れるなどして来日した。
2人はいずれも在留資格を失って強制退去を命じられ、2016年以降、入管施設への収容と仮放免が繰り返された。通算の収容期間は、サファリさんが1357日、デニズさんが1384日に上る。
収容中、デニズさんは複数回の自殺未遂を経験するなど、精神的な苦痛を受けた。また、サファリさんも、うつ病と診断された。
サファリさんらは2019年10月、国連人権理事会の恣意的拘禁作業部会(WGAD)に通報。
WGADは2020年9月25日付の意見書で、2人の拘禁について、世界人権宣言や「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(自由権規約)に反する「恣意的な拘禁」に当たると判断。日本政府に対し、2人が置かれた状況を調査し、適切な救済措置を講じるよう求めた。
これに対し日本政府は、WGADの意見には法的拘束力がないとの立場を示し、2人への補償も行わなかった。
サファリさんとデニズさんは2022年1月、両名に対する収容が国際人権法に違反するなどとして、国に計約3000万円の損害賠償を求める訴訟を提起した。
原告側は、「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(自由権規約)9条1項および4項に基づき、収容の違法性を主張している。
自由権規約9条1項は「恣意的に逮捕または抑留されないこと」などを定め、身体の自由および安全についての権利を保障している。9条4項は、逮捕・抑留された人が、拘禁の合法性について判断するよう裁判所に手続きを求める権利を保障するものだ。
2025年6月17日の一審判決(東京地裁)は、入管法の解釈が自由権規約に適合するものでなければならないとの前提の下、「自由権規約第9条第1項に照らして、収容には目的の合理性、必要性および比例性(※)が認められなければならない」との考え方を示した。
※手段が目的達成のため必要かつ合理的な範囲にとどまり過剰なものでないこと
そのうえで、デニズさんの3回目の収容と、サファリさんの3回目および4回目の収容については、比例性を欠いており、「恣意的な拘禁」に該当する違法なものだったと認定。
原告1人につき60万円、計120万円の支払いを国に命じた。
しかし、9月30日の東京高裁判決は一審判決を取り消し、原告側の請求を棄却。
高裁は、自由権規約をふまえても、退去強制制度や入管収容制度の具体的な仕組みは各国の制度設計に委ねられるとの考え方を示した。そのうえで、個別の収容については国際法ではなく入管法の枠内で判断すべきとした。
また、収容や仮放免について入管側に広い裁量があるとし、原告2人の収容について違法性を認めなかった。
さらに、一審が「比例性を欠く」として違法と認定した収容についても、高裁は違法とは認めず、国に対する計120万円の賠償命令を取り消した。
判決後の会見で、弁護団の浦城知子弁護士は、国が外国人を歯止めなく収容することを認めてしまう判決だと指摘。「弁護団一同、憤りを感じている」と語った。
鈴木雅子弁護士は「いま、国際社会において、国際法に基づく法の支配が揺らいでいる。そのなかで、日本の裁判所には『国際法に従います』と言ってほしかった」としつつ、「それが『日本は国際法の支配に従いません』という、非常に残念な判決」と遺憾の意を示した。
また駒井知会弁護士は「一審の判決にも不満な点は多々あったが…」としつつ、国際人権法を日本の裁判で扱ったことは評価できるとしたうえで、それも控訴審の判決で「台無しになった」とコメント。
「そもそもなぜサファリさんを長期間収容したのか、その理由も全く示されていない。
おもちゃのように人を出し入れして苦しめ、その結果として精神疾患が出ても全く気にしないという、残念な判決だ」(駒井弁護士)
駒井弁護士は「最高裁に舞台を移して、必ずそこで勝ちたい」と、上告する方針を示した。
会見に参加したサファリさんは判決について、「今回の結果は、非常に残念なものだと思う」と述べた。
「改めて、国の力はすごいということを思い知らされ、政府というものには敵わない、と思ってしまった。
しかし、この後も弁護士の皆さんに頑張ってもらい、私も頑張ることで、なんとかこの裁判に勝ちたいと思う。
収容について納得してはいない。私たちは外国人だから、私たちの人権を守るのは国際法。一方で入管法は、私たちの人権を守ってくれない。それなのに、国際法を無視して入管法を優先する判決はどうかと思う。
現在も、入管に収容されている外国人たちがつらい目にあっている。自分たちのためだけでなく、他の外国人のためにも、この裁判を争っていきたい」(サファリさん)
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