「投げ銭で“おもちゃ”が激しく振動し…」2時間で200万円稼ぐ女性も登場、AIが変貌させた“海外ライブチャット最前線”(文春オンライン)
52 分前

〈「ご馳走を食べすぎて“塩おにぎり”じゃ満足できない」専門医が警鐘を鳴らす、AI時代に急増する“若年性ED”とポルノ依存の異常事態〉 から続く
「不気味の谷」で行き詰まったポルノAIの主戦場は、今リアルタイムの「ライブチャット」へと拡大している。容姿の自動補正や身バレ防止技術に億単位の金が動き、肥大化する闇ビジネス。ユーザーの嗜好に合わせて過度にフィクション化していく「性コンテンツの最前線」と、エンジニアたちの本音に迫る。
〈「ご馳走を食べすぎて“塩おにぎり”じゃ満足できない」専門医が警鐘を鳴らす、AI時代に急増する“若年性ED”とポルノ依存の異常事態〉 から続く
「不気味の谷」で行き詰まったポルノAIの主戦場は、今リアルタイムの「ライブチャット」へと拡大している。容姿の自動補正や身バレ防止技術に億単位の金が動き、肥大化する闇ビジネス。ユーザーの嗜好に合わせて過度にフィクション化していく「性コンテンツの最前線」と、エンジニアたちの本音に迫る。
本連載では、世界のアダルトコンテンツ組み込まれる様々なAI技術の形と問題について考えてきた。
現代のアダルトコンテンツをAIによって支えているのは、AIエンジニアたちだ。彼らは今の潮流をどう捉え、どこにビジネスの勝機を見出しているのか。
連載の第2回では、日本のアダルトメーカーと組んでAI作品を開発した清水健を紹介した。彼は次のように話す。
「私は日本や中国でAI関連事業を手掛けながら、日本のAVメーカーの作品開発に携わってきました。最初はどこもAIで100%生成した作品を作ろうとしていましたが、今のところ厳しいです。
AI技術だけの問題ではなく、ユーザーの求めるものとの不一致が大きい。そもそも膨大な数の実写動画があるのに、あえて作り物であるAI作品を求めるのかということです。
また、アニメと違って、AIの場合は実写に似せれば似せるほど“不気味の谷”の課題にぶつかる。あまりに似すぎると、ユーザーはどこかで気味悪く感じて嫌厭してしまうのです。今の限界はここにあります」
清水の会社の中核事業は、中国で大人気を博しているAIドラマの制作だ。俳優から背景まですべてがAIによって生成された作品だ。
AIドラマの視聴者は、アクション、なぞ解き、どんでん返しなどに心を揺さぶられ、エンターテインメントとして受け入れる。
AIによるアダルトコンテンツがそれと決定的に違うのは、視聴者が感情移入できる艶めかしい身体行為だけを求めている点だ。そこに少しでも作り物っぽさがあり感情を揺さぶられなければ、視聴者はポルノと見なさない。つまり、アダルトコンテンツとしては失格ということだ。
清水はつづける。
「エンジニアたちの間では、AIはアダルトビデオ制作のためというより、別のジャンルに使うものという認識が広まっています。その一つがライブチャットです。
大手の動画配信プラットフォームにはライブチャットのサービスが大抵ついていますし、ライブチャット専用のサイトも多数あります。日本だけでなく、世界各国で同様のサービスは人気があり、アフリカの人がアメリカ人配信者のチャットにアクセスしたり、アラブ人がフィリピン人配信者のチャットにアクセスしたりしている。
今、特に熱いのは中東市場です。表向きはイスラム教の厳しい戒律があって禁止されているけど、需要が高くて資金力があるから巨大な闇市場となっている。
こうした流れを受けて、エンジニアたちの中では、ライブチャットの世界で誰がAI開発を担うかがホットな話題になっています。ソフト開発によって日本円で何千万、何億円という値がつくこともあるようです」
ライブチャットとは、“チャットレディ”などと呼ばれる配信者(主に女性)が待機しているチャットルームに視聴者がアクセスし、チップを払って服を脱がせたり、自慰行為をさせたりして鑑賞するサービスだ。ネット上でもわいせつな行為は違法だが、「個室(プライベートチャット、VIPルーム)」でのそれは常習化している。
サイト側は日本の法律に則って、配信者にも視聴者にも年齢制限を設けており、18歳以上(高校生不可)となっている。だが、未成年が年齢や身分を偽るなどして利用するケースは、私自身取材の中で散々見てきた。
このライブチャットで、一体どんなAIソフトの開発が起きているのか。
7月の暑い盛り、東京都紀尾井町の文藝春秋の会議室で会ったのが、鬼才エンジニアと評判の大野智樹(仮名)だ。清水からの紹介だった。大野はまだ20代と若く、アロハシャツにサンダルというラフなスタイルで現れた。
大野は、理系の大学を卒業後、大手企業やベンチャー企業でのAIのシステム開発を経て、現在は独立してデータセンターの設計・構築の仕事を手掛けている。
彼によれば、フリーのAIエンジニアは引く手数多で、表では正業によって収入を得ながら、裏でポルノ関連の仕事を請け負って稼いでいる人も少なくないという。大野と清水もそこで知り合ったそうだ。
大野はAIとアダルトコンテンツの関係性について次のように話す。
「ライブチャットは、世界のポルノの中での人気コンテンツと言っていいと思います。当然お金もその分だけ集まります。
日本のライブチャットは、少し前まで国内企業が日本人向けに合法的に運営していました。でも、今は海外の企業が運営するライブチャットを、世界各国のモデル(配信者)が利用し、ユーザーがそこにアクセスして有料で視聴するのがメジャーになりつつあります。日本の配信者も海外のプラットフォームを利用する人が増えていますね。理由はそっちの方が圧倒的に稼げるからでしょう。
人気配信者の中にはタレントみたいに事務所に所属している人もいますよ。収入でいえば月に数百万も珍しくありません。トップクラスだと、億単位になるんじゃないでしょうか」
そう言って大野がノートパソコンで見せてくれたのが、世界最大級のライブチャット「Stripchat」だった。
コンテンツにはアラブ系、インド人、ラテン系、アジア系などと分類され、世界各国の配信者の顔が数えきれないほど並んでいた。日本人女性やカップルの配信者も数百人おり、アイコンの下に日本の国旗のマークがついている。
そのうちの一つを大野がクリックすると、日本人女性が全裸でアダルトトイを胸と下腹部に当てているライブ映像が映し出された。自慰行為をしながらカメラの向こうの視聴者と掛け合いをしている。平日の夕方にもかかわらず、この配信の視聴者数は2000人を超えていた。
「このサイトが人気なのは、オンラインサービスならではのスキルを駆使したサービスを提供しているからなんです」
彼が示したのは、ライブ配信画像の横にあるサービス機能だった。コメント欄やチップ機能の「投げ銭」の他に、「大人のおもちゃ」という機能がある。
大野によれば、視聴者がこの「大人のおもちゃ」をクリックして課金すれば、遠隔操作で画面の向こうのアダルトトイが振動し、配信者にリアルタイムで刺激を与えることができるという。
大人のおもちゃの料金は時間や動きによって細かく決められており、1回10秒前後で数百円、それ以上になると数千円になる。振動のバリエーションも「低」「中」「高」「超高」「ランダム」「ウェーブ」「パルス」など多数あり、それぞれ料金体系がわかれている。
しばらく視聴していると、大野が言うように、視聴者がひっきりなしに投げ銭や大人のおもちゃ機能に課金していた。そのたびに配信者の女性が淫靡な声を上げて反応し、コメント欄にはそれを喜ぶ視聴者の言葉が無数に書き込まれる。とにかく市場が大きく、キックバック率は約55%なので2時間で200万円稼いでる人までいるという。
会議室でパソコンを見ながら、これが若者が日常的にアクセスするアダルトコンテンツの最前線なのかと思うと暗澹とした気持ちになった。
「このライブチャットのサービスの中にもたくさんのAIが入っているはずです。ただ、僕らエンジニアが開発しているのは、ライブチャットで配信している女性に対して使えるリアルタイムの顔入れ替えソフトです。
ライブチャットで儲かるかどうかは、顔の良し悪しにかかっています。だから、チャット内でその顔をリアルタイムで美人にすることができるソフトを開発できれば、より儲けられるということです」
静止した裸の画像に顔だけを違和感なく入れ替えるアプリはすでに出回っている。だが、ライブチャットのように細かく動き回るリアルタイム動画に顔だけを自然に付け替えるのは簡単ではない。角度にズレが生じたり、立体性が損なわれたり、大きさや色に違いが生じたりすることがある。この微妙性が極めて難しいが、うまくいけば美人ばかりを有するライブチャットプラットフォームを作れるというのだ。
大野はつづける。
「顔に関しては完全に別人にするわけではありません。配信者の顔をベースにして、こちらが設定する美女の顔を何対何かで割って、現実には存在しない女性を作るんです。チューニングさえうまくいけば、美人を作ることはできます。あとは、それをどこまでリアルタイムの動きに合わせて自然に近づけるかです。
顔を変えるメリットは、配信者の容姿を変えるだけでなく、顔バレの心配をなくせることにもあります。配信者の中には既婚者や兼業も多いので、身近な人に顔バレすることを一番恐れている。そのリスクをなくせれば、これまで配信を躊躇っていた人も取り込めるようになる。
さらに言えば、今後は顔だけじゃなく、体の入れ替えも重要になってくるはずです。これが完成すれば、バストやヒップを大きくするだけでなく、黒人を白人に変えるとか、50歳の体を20歳のそれに変えるといったことが可能になる。極端な話、東南アジアの60歳のおっさんが、AIを使って20歳の金髪美女に変身してライブチャットで配信して金を稼げる時代が来るんです」
こうしたAIソフトもオープンソースAIを基盤にして開発される。ただ、ChatGPTのようなクローズドAIをまったく使わないわけではなく、大野の場合はコードを書くために利用しているという。
誰がこういうAIソフトを求め、発注するのか。大野によれば、ライブチャットの配信者たちを管理している事務所だそうだ。
こうした事務所からすれば、美しい配信者を多数抱えられればそれだけ視聴者を取り込むことができる。そういう意味では、こうしたAIソフトの開発は急務であり、億単位の開発費が動くのも納得できる。むろん、そこではかなり高度な技術が求められるため、数人の技術者が片手間でやってできるようなものではないらしい。
一方、日本国内の小規模な事務所であれば、さほど高い性能が求められない代わりに、数百万円から数千万円でソフトが売り買いされているという。こうした会社の要求は、顔を完全に変えることはできなくても、ある程度見栄えを良くしたり、タトゥーやリストカットの痕を見えなくしたりするような内容らしい。
大野の言葉である。
「TikTokにも、動いている顔をリアルタイムで美しく見せるビューティー系フィルターがありますよね。あれの延長線みたいなものなので、それほど開発は難しくありません。
僕もある事務所に、行為中でも顔が崩れずリアルタイムで容姿を補正できるAIアプリを開発して売ったことがあります。それは買い取りで700万円でした。開発費は40万円くらいで、開発期間は2週間程度です。
開発者は僕も含めて『社会貢献』をしているという認識だと思います。ユーザーからすれば好みの配信者が増えるわけですし、配信者からすれば顔バレや、最悪逮捕の不安なく大金を稼ぐことができるわけですから、みんなにとってウインウインなんです」
ライブチャットの業界では、大野の言葉は「正論」かもしれない。ただ、アダルト動画にせよ、ライブ配信にせよ、そこにAIが介在すればするほど視聴者が求めるリアリティからどんどん離れていく。それは本当に視聴者が求めていることなのか。
この疑問を投げ掛けたところ、大野は答えた。
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