昼寝か短時間の運動か? 睡眠不足でも記憶力を維持する方法を専門家が解説(CNN.co.jp)
一昨日

(CNN) 睡眠を取らずにいると、集中したり新しい情報を学んだりすることが難しくなる。また、夜勤をする人や、深刻な睡眠不足に陥ることのある人の場合、十分な休息を取ることが必ずしも可能とは限らない。
そうした場合に睡眠以外で、集中力を保つ方法はあるだろうか。科学誌「米国科学アカデミー紀要」に掲載された最近の研究は、睡眠不足になっても記憶を守るための二つの方法として有酸素運動と昼寝を比較。その結果、短時間の運動が本当に昼寝と同じような認知機能上の効果をもたらしうることが分かった。
こうした研究結果をどのように生かすことができるかを理解するため、CNNのウェルネス専門家、リアナ・ウェン氏に話を聞いた。ウェン氏は、ジョージ・ワシントン大学の救急医で臨床准教授。メリーランド州ボルティモアの衛生局長を務めた経歴も持つ。
CNN:研究では、運動と昼寝の効果をどうやって明らかにしたのですか。
ウェン氏:研究では18~35歳の健康な成人54人に30時間起きたままで過ごしてもらったあと、無作為に三つのグループに割り当てた。第1グループは、最大心拍数の80%に達する中~高強度のサイクリングを20分間実施し、第2グループは90分間の昼寝。対照群は、運動せずにフィットネスバイクに20分間座って過ごした。
その後、参加者に150枚の画像を見せ、その間、脳波検査(EEG)技術を使って脳の活動を記録した。参加者には、その後に記憶テストを実施することは知らされていない。睡眠不足から回復する時間を取った3日後、最初に見た画像に新しい画像を交ぜて見せ、どの画像を覚えているか尋ねた。
興味深い点は、昼寝をした参加者は、その後の疲労感が大幅に軽減したと報告した一方、運動した人たちの疲労感は対照群と同程度だったことだ。同じくらい疲れていると感じていたのに、運動したグループは記憶テストで対照群を大幅に上回ったのだ。
CNN:これほど長い時間起きていた後の20分間の運動が記憶に役立つのはなぜでしょう。
ウェン氏:睡眠不足になると、脳が新しい情報を取り込み記憶する能力が妨げられる。長時間起きていると、睡眠圧が高まり、記憶を形成するために必要な神経プロセスの効率が低下する。
だが脳波検査の記録からは、運動がこうした影響の一部を打ち消すのに役立ったことが示唆されている。記憶作業に関わる脳領域で、神経疲労を示す指標が低下した。考えられる仮説の一つは、運動することで、睡眠不足の脳が認知資源をより効率的に使えるようになるというものだ。
CNN:運動と昼寝は、同じような仕組みで脳を助けるのでしょうか。
ウェン氏:全く同じというわけではない。私の考えでは、この点が今回の研究で特に興味深い発見の一つだった。運動と昼寝は記憶力に同程度の効果をもたらしたが、その神経プロセスは異なっていたのだ。
昼寝は、睡眠不足の脳の根本的な状態を変化させた。昼寝をしたグループでは疲労が軽減し、睡眠圧を示す脳波検査の指標も低下した。睡眠圧は、眠ろうとする生物学的な欲求で、起きている時間が長くなるほど強まる。こうした脳の状態の改善に関係する指標は、参加者が新しい記憶をどの程度うまく形成できたかと強く関連していた。
運動は、昼寝と同じように睡眠圧を軽減したわけではない。その代わり、記憶処理の効率を高めたようだ。つまり、昼寝は、脳が求めていた睡眠をある程度与えたのに対し、運動は、睡眠不足の状態でも脳がより効果的に機能するのを助けたということになる。
CNN:睡眠不足の人は、昼寝の代わりに運動をすればよいということでしょうか。
ウェン氏:いや、運動は睡眠の代わりにはならない。睡眠は、免疫や代謝のプロセスを調整したり、脳のさまざまな機能を支えたりするなど、全身で不可欠な役割を果たしている。20分間の運動がこうした機能を果たすことはできない。ただし、定期的な運動は睡眠に役立つし、睡眠もまた運動の助けになる。
今回の研究が検証したのは、もっと限定的な問いだ。それは、深刻な睡眠不足に陥っている場合、何らかの介入によって、特定の認知能力、つまり新しい記憶を形成する能力を守ることができるか、というものだ。この研究の特定の条件下では、この点について、20分間の運動と90分間の昼寝で同程度の結果が得られた。
これは実生活で役立ちうる。医療従事者や運輸関係者など、安全性が特に重視される職業の人は、睡眠が不足する場面もままあるが、90分間の昼寝をする時間や昼寝に適した場所を常に得られるとは限らない。そうしたケースでは短時間の運動が、記憶を維持するための別の方法になるかもしれない。ただし、深刻な睡眠不足の状態でも運動をすれば安全に運転したり、その他の危険な作業をしたりできるという意味に解釈すべきではない。
CNN:前の晩によく眠れず疲れている人や、日常的に睡眠不足の人にも、今回の研究結果を当てはめることはできますか。
ウェン氏:これは、若く健康な成人が実験室の環境で30時間連続して起きていた場合を対象とした小規模な研究だ。検証したのは、特定の1種類の運動方法と、認知機能の一つの側面にすぎない。
慢性的な睡眠不足の場合や、持病のある高齢者、あるいは別の種類や強度の運動をした場合にも同じ効果が得られるかどうかは分かっていない。また、睡眠不足で損なわれる注意力や反応時間、判断力など多くの機能が運動によって回復するかどうかも今回の研究では示されていない。
CNN:睡眠不足でも、その日にしっかり活動しなければならない場合、どうすればよいでしょう。
ウェン氏:最優先すべきなのは、睡眠を取るよう努めることだ。成人は普段から少なくとも7時間の睡眠を取ることを目指すべきとされる。夜に十分な睡眠を取れなかった場合には、昼寝が役立つことがある。昼寝できない場合は、学習や記憶が必要になる時間帯の前に、短時間の有酸素運動をするのが有効かもしれない。早足で歩いたり、階段を上ったり、フィットネスバイクを使ったりするといいだろう。
カフェインは一時的に注意力や集中力を高めることができ、長期的には認知症のリスクも抑えうるが、睡眠不足の影響を元に戻すことはできない。規則正しくバランスの取れた食事を取り、水分を維持することも大切だ。食べ過ぎると眠気を強めることがあり、アルコールは注意力や判断力をさらに低下させる恐れがあるため避けたほうがいいだろう。
こうした方法には限界があり、深刻な睡眠不足のときに運転などの危険を伴う作業を安全にできるようになるわけではないことも認識する必要がある。
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