【大会長インタビュー】SNS症例で選ぶのは危険!? 失敗しない美容医療と医師の見極め方(メディカルドック)
39 分前

美容医療は、いまや特別なものではなく、多くの人が人生のどこかで検討する選択肢になりました。一方で、SNSや広告に情報があふれ、「どのクリニックを、どの医師を選べばよいのか」に迷う人も少なくありません。
2026年10月に東京・渋谷で開催される第4回日本美容医師会(テーマ:未来に繋ぐ美容医療)を前に、同会で中心的な役割を担う3人の医師に、患者さんが安心して美容医療と向き合うための「選び方」と「見極め方」について専門家ならではの意見を聞きました。
1995年、東京大学医学部医学科を卒業。東京大学医学部附属病院産婦人科を経て美容外科の道へ進み、大手美容外科クリニックで14年間にわたり副院長・診療部長などを務めながら症例経験を積む。2009年、東京・二子玉川に「あきこクリニック」を開院し院長に就任。2013年には医療法人社団英僚会を設立し理事長を務める。2022年に第110回日本美容外科学会(JSAS)会長、2026年には第4回日本美容医師会の会長を務める。日本美容外科学会(JSAS)理事。クリニックの垣根を越えた勉強会「あきラボ」を主宰し、若手医師の育成にも力を注いでいる。
2002年、昭和大学(現・昭和医科大学)医学部を卒業し、昭和大学藤が丘病院形成外科に入局。2006年に昭和大学大学院医学研究科を修了し、医学博士号を取得。佐賀大学医学部附属病院形成外科助教などを経て、2012年に横浜市青葉区で「あらおクリニック 青葉台皮膚科・形成外科」を開業した。2022年には青葉台駅前へ移転し、手術室・レーザー室を備えたクリニックとして地域の美容医療を担う。日本形成外科学会認定専門医、日本美容医療協会の美容レーザー適正認定医。日本形成外科学会・日本美容外科学会・日本美容皮膚科学会・日本皮膚科学会に所属。
大阪医科大学を卒業後、田嶋定夫教授、谷野隆三郎教授のもとで形成外科・美容外科を学ぶ。2000年に大阪いけだクリニックを開院し、2009年には東京・新宿に「東京皮膚科・形成外科」を開設。現在は同グループの総院長を務める。2010年に日本アンチエイジング外科学会 理事長、2017年に医療アートメイク学会を発足し理事長に就任。2023年には第111回日本美容外科学会(JSAS)会長を務めた。日本形成外科学会専門医、日本美容外科学会専門医。日本美容医師会 理事長として、業界全体の医師教育と質の向上に取り組んでいる。
第4回大会のテーマは「未来につなぐ美容医療」です。この言葉に込めた想いを教えてください。
私自身、施術を行う医師としての活動に一区切りを意識する時期に差しかかっています。
だからこそ、これまで培ってきた技術や経験を次の世代の医師へ引き継ぎ、日本の美容医療全体の質を底上げしていきたいと考えています。その想いを「未来につなぐ」という言葉に込めました。
美容医療には多くの学会・研究会があると思います。そのなかでも日本美容医師会はどのような組織なのでしょうか。
日本美容医師会は15年以上前に設立された組織です。特徴は、機器や薬剤のメーカー主導で運営される研究会とは異なり、開業医同士がトラブルや症例を率直に共有し合い、患者さんのために学び合う場として続いてきました。
当初は「アンチエイジング」を掲げていましたが、その呼称が使いにくくなった経緯もあり、現在の形に至っています。
さまざまな診療科の医師が一堂に会する大会で、特に力を入れていることを教えてください。
若手医師に発表の機会を提供することです。規模の大きな学会では専門家しか登壇できないことも多く、大学病院などで体系的に発表指導を受ける機会が少ない医師もいます。
本会では抄録(発表要旨)の書き方から指導し、次世代を担う医師を育てる教育の場をつくっています。大学病院であれば当然のように教わる発表の基本を学ぶ機会がないまま、開業医のもとで働き始める医師も増えています。
そうした背景があるからこそ、本会での指導には意味があると考えています。
初めて美容医療を検討する人が、クリニックや医師を選ぶときに確認するとよい点を教えてください。
Instagramなどの症例写真だけで判断せず、必ずクリニックのホームページを見て、医師の経歴を確認してほしいと思います。なかには経験の浅い医師が、過度な広告によって集客しているケースもあります。
実際に、初期研修を終えてすぐ、大手クリニックでの勤務期間がわずか4カ月という医師が開業しているケースもありました。表に出ている華やかさだけでなく、その医師がどのような研鑽を積んできたかを見てほしいと思います。
SNSや広告の情報と、患者さんはどう向き合うべきでしょうか。
真面目に取り組んでいる医師ほど広告規制を守って、発信を控えめにしている傾向があると思います。そのため、規制を軽視した過度な広告が目立ってしまうという現状があります。
近年のSNSの隆盛を踏まえると、発信力の大きさだけで選ぶのは危険です。学会などの専門的な組織に所属し、学術活動を続けている医師かどうか、という視点を持つことが大切ではないかと考えています。
未承認の医療機器を用いた治療を大々的に宣伝するクリニックがある一方で、規制を守る医師のホームページには十分な情報を載せられないという、不公平な状況も生じています。
情報の受け取り方について、世界的にはどのような課題があるのでしょうか。
韓国やトルコなどでも、SNSやAIを使った画像・動画の加工が深刻な問題になったケースがあります。AIによる不確かな情報や、過度に加工された写真が広がりやすい時代です。
だからこそ、SNSの情報をうのみにせず、誰が発信しているのか、を重視してほしいです。学会活動を通じて信頼性を担保している医師を一つの基準にしていただければと思います。
実際に韓国を視察した際、SNSで華やかに発信していた医師の経歴を調べると、半年前まで医学生だったという例もありました。
トルコでは、症例写真を過剰に加工していた医師が摘発される事例も起きています。気になる医師については、経歴に問題がないかをAIに調べてもらうことも、一つの自衛策になります。
よいカウンセリングを見分けるには、どのような点に注目するといいのでしょうか。
メリットばかりを強調する医師は、慎重に考えた方がいいかもしれません。
ダウンタイム(施術後、回復までに必要な期間)やリスクについても誠実に説明し、患者さんの話をよく聞いたうえで治療を提案してくれるか。そこが、信頼できるかどうかの分かれ目だと考えています。
美容医療で起こりうるリスクには、どのようなものがありますか。
大前提として、美容医療は「魔法」ではありません。どんな施術にも一定のリスクは伴います。まずは受ける側が、その点を理解しておくことが大切です。
うまくいく話だけでなく、起こりうることを正しく知ったうえで検討してほしいと思います。例えば、レーザーでシミを的確に除去するには一定の出力が必要で、色素沈着のリスクは避けられません。
ヒアルロン酸注入でも、どれだけ注意していても一定の確率で内出血が起こることがあります。
万一トラブルが起きた際の対応や修正について、受診前に知っておくべきことを教えてください。
一つの目安として、その医師がトラブルを修正できるかという視点があります。たとえばヒアルロン酸注入であれば、万一のときに対応するための溶解剤(溶かすための薬剤)を院内に備えているかがポイントです。
そのような、リスクに対する備えがあるかどうかは、安全性を判断する材料の一つになります。
施術の質と安全性を、業界全体でどのように高めていくのでしょうか。
初期に誰の下で学ぶか、という指導者の存在が非常に重要です。特定の施術に特化したクリニックでは、幅広い診断力が育ちにくい傾向も指摘されています。
多様な治療を経験し、トラブルにも正しく対処できる指導者のもとで学ぶこと、そして勉強会に継続的に参加し続けることが大切だと考えています。日本美容医師会はそのための場を提供しています。
AIや新しい機器の進歩は、これからの美容医療をどう変えていくでしょうか。
AIは情報を調べるツールとしては有益です。ただ、最終的な技術や判断を支えるのは、やはり医師自身の鍛錬です。
AIが普及しても、医師が担う役割の本質は変わらないと考えています。現在は、動画でも本人と見分けがつかないほど精巧に加工できる時代です。
私自身も、実在しない人物の映像に騙されそうになった経験があります。
人生100年時代に、美容医療をどう位置づけるとよいでしょうか。
エイジングケアは、早めのメンテナンスが肝心だと考えています。20代・30代からの継続的なケアが、100歳になったときの自分をつくるという考え方もあります。年齢を重ねても自分らしくあるための選択肢として、無理なく付き合っていただければと思います。
最後に、これから美容医療を検討する読者へメッセージをお願いします。
SNSの情報だけに頼らず、実際にクリニックへ足を運び、医師と対面して、感覚が合うかどうかを確かめてほしいと思います。
保険診療が厳しさを増すなか、美容医療に関心を持つ他科の医師も増えています。そうした医師も安全に学べる場として、本会の意義は大きいと感じています。
SNSの情報が、ときにプロパガンダのように働く時代です。繰り返しになりますが、「誰が発信しているのか」を見てください。学会に所属し、活動している医師には、一定の信頼の裏づけがあります。
手間はかかりますが、後悔しないための大切なプロセスです。第4回日本美容医師会大会も、引き続き学びの場を提供できるよう準備を進めています。
3人の先生方に共通していたのは、発信力や華やかさではなく、学び続ける姿勢と誠実さで医師を選んでほしいというメッセージでした。美容医療を検討するとき、私たちにできるのは、情報の出どころを確かめ、リスクまで丁寧に説明してくれる医師を選ぶこと。その一歩が、後悔しない選択につながるのかもしれません。美容医療の適応やリスクは一人ひとり異なります。実際に検討する際は、信頼できる医療機関で十分なカウンセリングを受け、気になる点は担当医にご相談ください。
田中 亜希子 医師(あきこクリニック)
東京大学医学部医学科卒業。その後、東京大学医学部附属病院産婦人科、大手美容外科などで経験を積む。2009年、東京都世田谷区に「あきこクリニック」を開院。第110回日本美容外科学会会長、日本美容外科学会(JSAS)理事、日本アンチエイジング外科学会(JAAS)理事。日本美容外科学会(JSAPS)、日本美容皮膚科学会、日本形成外科学会、日本抗加齢医学会の各正会員。
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