【闘病】看護学生の左手が動かなくなり… 3年後に判明した難病『エーラス・ダンロス症候群』(メディカルドック)
4 日前

エーラス・ダンロス症候群(EDS)は、結合組織(骨や皮膚、血管などを支え、つなぐ組織)の異常によって、関節や皮膚などに障害が生じやすい遺伝性の難病です。
看護学校に入学して間もない2022年4月、関節痛や関節がずれる感覚などの異変が表れた未来さん(仮称)は、全国の医療機関を受診しても原因が分からず、診断がつくまでに約3年を要しました。これまでに計5回の入院と3回の手術を経験し、現在はリハビリテーション(以下、リハビリ)や内服治療を続けながら、手術室看護師として働いています。
未来さんに発覚から診断、治療、現在に至るまでの経緯を聞きました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2026年3月取材。
エーラス・ダンロス症候群(EDS)は、結合組織(骨や皮膚、血管などを支え、つなぐ組織)の異常によって、関節や皮膚などに障害が生じやすい遺伝性の難病です。
看護学校に入学して間もない2022年4月、関節痛や関節がずれる感覚などの異変が表れた未来さん(仮称)は、全国の医療機関を受診しても原因が分からず、診断がつくまでに約3年を要しました。これまでに計5回の入院と3回の手術を経験し、現在はリハビリテーション(以下、リハビリ)や内服治療を続けながら、手術室看護師として働いています。
未来さんに発覚から診断、治療、現在に至るまでの経緯を聞きました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2026年3月取材。
未来さん(仮称)
体に本格的な異変を感じたのは、看護学校に入学して間もない2022年4月。その後、2026年までに第1肋骨の摘出や小胸筋の切断、神経の移行など、計5回の入院と3回の手術を経験する。現在も治療と向き合いながら、手術室看護師として患者さんの人生と命に寄り添っている。
体に異変を感じたのは、いつごろでしたか?
看護学校に入学した後です。関節痛や関節がずれる感覚、しびれがあり、整形外科を受診しました。その後も全国の医療機関を受診しましたが原因は分からず、訪ねた先はクリニックなどを含めて11件に上りました。
症状が悪化していく中で、どのように過ごしていましたか?
看護学生のころ、どんどん左手が動かなくなり、最終的には拘縮(関節が固まって動かせなくなること)してしまい、利き手が使えなくなりました。ペンを持つのも箸を持つのも右手に変え、授業や看護実習など、とにかく同級生から後れを取らないよう必死でした。
それでも、すごく親身になって私に寄り添い続けてくれた学校の先生たちのおかげで、看護の道から逸れることなく、夢を追いかけ続けることができました。
EDSという診断には、どのようにたどり着いたのでしょうか?
私は当時看護学生として医療知識に触れる機会があったため、自分の症状を調べるうちに、EDSの中でも関節過可動型エーラス・ダンロス症候群(hEDS)ではないか、という考えにたどり着いていました。
しかし、さまざまな病院を受診する中で「その症状は精神的なものではないか」と言われてしまい、自分の口から伝えることはできませんでした。
そんなある日、近くにhEDSを診てくれる病院を見つけ、すぐに受診しました。すると、その場で「hEDSで間違いないと思います」と言われたんです。約3年も診断がつかない状態だったので、「ほら、気のせいじゃない、精神的でもないじゃん」と心の中がすっきりしました(※)。
※hEDSは原因となる遺伝子が特定されておらず、遺伝子検査で確定できる病気ではありません。国際的な診断基準に沿って症状を評価し、ほかの疾患を除外した上で診断されます。未来さんの場合は、それまでの約3年間の受診歴や検査結果の積み重ねがあった上での診断であり、初診で短時間のうちに診断がつくのは一般的ではありません
EDSについて、医師からはどのような説明がありましたか?
EDSにはいくつかの病型があり、私はhEDSに該当すると説明されました。hEDSには、結合組織の異常によって関節や皮膚などに障害が生じやすい特徴があるそうです。
「根本的な治療法はまだなく、リハビリや痛み止めなどで症状をコントロールし、杖や車いすを使って関節を保護しながら生活している人は多い(※)」という説明も受けました。
※診察した医師の意見です
発症から現在まで、どのような治療を受けてきましたか?
主に痛みを抑えるために鎮痛剤を使用し、そのほかの消化器症状や循環器症状に対しても、内服でコントロールしながら生活を送っています。外科的治療としては、整形外科と脳神経外科で、第1肋骨の摘出や小胸筋の切断、尺骨神経前方移行術・尺骨神経絞扼(こうやく)解除術(圧迫された神経の締め付けを取り除き、神経の位置を移す手術)を受けました(※)。
※未来さんが受けた手術は、症状の程度や部位に応じて選択されたものです。hEDSの患者さん全員が、このような手術を受ける必要があるわけではありません
日常生活には、どのような影響がありますか?
鎮痛剤を使用しても常に体に痛みがあり、痛みで眠れない夜もあります。走ることはもってのほかで、歩くことさえきつい日も少なくありません。
一番困るのは、どんな場面ですか?
仕事中です。普段は手術室看護師として働いています。手術時間が長くなると立ち仕事の時間も延びるため、その分痛みも強くなってしまいます。
関節の痛みのほかにも、困っている症状はありますか?
hEDSは自律神経系の障害や消化器の症状も生じやすいといわれていて、私の場合もおなかを下しやすく、食事を思うように楽しめなくなりました。今まで好きだったものが好きなように食べられないのはつらいですね。薬の副作用による吐き気もあり、吐き気と闘う日も多々あります。
つらいとき、支えになったものは何でしたか?
母の存在です。母も昔から体が強いほうではなかったので、私の気持ちを一番に理解してくれました。母がいつもそばで支え続けてくれたから、診断にもたどり着け、手術室看護師にもなれました。普段は恥ずかしくて伝えられていませんが、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
病気を通して得た気付きがあれば教えてください。
きっと病気でなかったら、私にとって看護はただの仕事だったと思います。病気が発覚してからは、看護に対する向き合い方が変わりました。「絶対に看護師になって、同じような経験をしている人たちの人生と命に寄り添いたい」と思うようになったんです。
今では病気は私のバディー(相棒)であり、病気があることは弱みではなく、看護師としての私の強みになっています。
EDSを知らない人に、伝えたいことは何ですか?
まだまだ世の中には、原因不明の病気がたくさんあります。EDSもその中の一つです。普段の生活でEDSの患者さんに出会う機会は少ないと思いますが、もしヘルプマーク(外見からは分からなくても、援助や配慮を必要としている人が身に付けるマーク)を付けた人や体の不自由な人に出会ったときには、ぜひ手を差し伸べてもらえたらうれしいですね。
いつか障害の有無にかかわらず、みんなが生きやすい世の中が来ることを願っています。そして、体のSOSは気のせいではないということも伝えたいです。
医療従事者に、もっと知ってほしいことはありますか?
病院に就職したとき、EDSについて話をしましたが、この難病があること自体、知られていませんでした。患者でありながら医療従事者になったことで、「病気自体が知られていないから、診断に時間がかかるのだ」とやっと理由が分かりました。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
読者の皆さんに伝えたいのは、「何気ない日常こそ大切に!」ということです。病気になって、そして医療従事者になって、本当にいつ何が起きるか分からないなと感じます。今まで普通にできていたことが病気になってできなくなり、「もっとああしていればよかった」と思うことばかりです。
将来のことも大切ですが、いつか後悔してしまう日が来るのなら、行動するのは「今!」です。まずは、目の前にある今を大切にしてください。
診断がつくまで約3年、11の医療機関を受診し続けた未来さん。現在は治療を続けながら手術室看護師として働き、「病気があることは弱みではなく、看護師としての強み」と語ります。「体のSOSは気のせいではない」という未来さんの言葉のとおり、気になる体の異変が続くときは放置せず、医療機関に相談してみてください。
本記事は未来さん個人の闘病体験に基づくものです。エーラス・ダンロス症候群は病型や重症度によって症状・経過に幅があり、すべての患者さんが同じ症状を呈するわけではありません。診断に至るまでの経緯も一人ひとり異なります。
本稿には特定の医薬品、医療機器についての記述がありますが、情報提供のみを目的としたものであり、医療上の助言や販売促進などを目的とするものではありません。
なお、メディカルドックでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
【この記事の監修医師】
後藤 和哉 先生
大分大学医学部卒業後、関西電力病院、京都大学医学部附属病院、研修医を経て京都大学医学研究科、天理よろづ相談所、皮膚科医。
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