《ブラジル》京都哲学研=西洋近代超える「共生の知」を=AI時代に新たな座標軸探る(下)=『破壊的な想像/創造』(ブラジル日報)
53 分前

一般社団法人京都哲学研究所(KIP)は9月17日、サンパウロのジャパン・ハウスで特別セッション「KIP Special Sessions in Brazil」を開いた。午後の部では「慈善活動、援助、社会変革の倫理」と「未来を形作るのは誰か? テクノロジー、制度、そして公共の責任」をテーマにパネルディスカッションを実施。その後、三つのテーブルに分かれて議論を深めた。
「慈善活動、援助、社会変革の倫理」では、同研究所の出口康夫共同代表理事、カンピーナス州立大学教授のレイメルト・ガルシア・ドス・サントス氏、ジャパン・ハウス文化ディレクターのナターシャ・バルザギ・ジーネン氏の3人が登壇。
長年、ヤノマミ族の支援に携わってきたレイメルト教授は、国際的な助成金団体やNGOなどが、自らの倫理観に基づいて一方的に介入していると指摘。出口教授の見解を用い、先住民らと「WE(私たち)」の対話ができていない状況を「存在論的な非対称性」と表現した。
芸術・文化の立場から発言したナターシャ氏は、文化施設の役割を「来館者の感性と展示されるストーリーが出会う場を作ること」と指摘。非対称性を打破するには、「機関側が知識を持ち、観客を教育するのだ」という考えを捨てる必要があると述べた。
これに対し出口教授は、「『私』が小さくなり、より広大な『私たち』へとひらかれていくタイミングで、連帯と変革の新たな倫理が可能となる」と述べ、学術や文化、現場の枠組みを超えた協働の重要性を強調した。
第2部のパネルディスカッションには、NTTデータ・ブラジル会長兼中南米アライアンス責任者のリカルド・ネーヴェス氏、リオデジャネイロ州連邦大学(UNIRIO)歴史学部教授のアウグスト・ブルーノ・デ・カルヴァーリョ・ジアス・レイチ氏、非営利団体「教育のパートナーたち」創設者で代表のジャイール・リベイロ氏が登壇した。
議論では、過去の産業革命を手掛かりに、現在進行するテクノロジー革命と人間がどう向き合うかを巡って意見を交わした。
歴史哲学の視点を持つアウグスト教授は、私たち人間の「現在」は瞬く間に過去になり、未来とは「過去のあり方の一形態」と述べ、人間が未来に対して責任を持つための「思考のテクノロジー(認知の枠組み)」であると論じた。
ジャイール氏は、19世紀に起きた第2次産業革命の際に民間資本が社会を動かした構造と、ビッグテック主導のAI開発は酷似していると指摘した。
アウグスト教授は「人間であることの意味という問いに、機械に答えを委ねるべきではなく、人間自身が追求すべき領域」と語った。核不拡散の歴史を繰り返さないためにも、国際的な条約や世界的な合意が非常に重要だとの指摘が出た。
テクノロジー進化がもたらす利点として「意義ある人生とは何か」を探求する機会となり、「私たちが何者であり、何を本当に大切にするのか」との課題を突きつけているとの議論が交わされた。
最後に、三グループに分かれて分科会を開いた。サンパウロ大学東洋言語学科(FFLCH―USP)のジオゴ・セザール・ポルト・ダ・シルヴァ教授のグループでは、「ロボットの人間化/人間のロボット化」という問いを立てて議論。AIは非常に人間に近しいものになっているものの、根本的に「感じる能力」だけは獲得できず、AIが完全な人間になることはないとの結論に至ったという。
サンパウロ大学コミュニケーション芸術学部(ECA―USP)のエウジェニオ・ブッチ教授のグループでは、歴史的観点から民主主義とテクノロジー、国家の産業戦略や学術機関のあり方について多角的に検証。
ダイソー・ブラジルCEOの大野恵介氏のグループでは、AIは過去のデータ収集を得意とする一方、「否定ができない」ため、新しいものを生み出すことができないと指摘。AIではアート的な発想が生まれないとの結論に至り、人間にしかできないことを見いだした。
乾杯の挨拶で大野社長は、人間にしかできない「破壊的な想像/創造」を主張した。
KIP共同代表理事でNTT会長の澤田純氏は本紙の取材に対し、「とても生産的な会議になった」と語った。閉会の挨拶では「難しいテーマもあったが、すべてのセッションを通じて非常に実りある議論ができた」と一日を振り返り、来年7月に京都で開く第2回京都会議への参加を呼びかけた。(終り)
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