世界で最も広く使われている薬のひとつ「アスピリン」が一部の人の認知症リスクを大幅に軽減する可能性
42 分前
アスピリン(アセチルサリチル酸) は代表的な非ステロイド系抗炎症薬であり、解熱鎮痛剤として世界中で広く使われています。毎日低用量のアスピリンを服用した高齢者を対象にした研究で、アスピリンが特定の遺伝的プロファイルを持つ人の認知症リスクを軽減する可能性があると示されました。
アスピリンは頭痛や関節炎、外傷などの痛みを軽減する目的で用いられるほか、 血小板 の凝集を阻害して血栓形成を防ぐ抗血小板薬として服用される場合もあります。アスピリンの抗血小板作用により、服用すると血液がサラサラになることから、近年ではアスピリンがさまざまな疾患を防ぐ可能性に注目が集まっています。
今回、オーストラリアのモナシュ大学公衆衛生・予防医学部のピーター・フランケ博士らの研究チームは、個人の遺伝子がアスピリンの認知症リスク軽減効果に及ぼす影響を調べました。研究の対象となったのは、1日100mgの低用量アスピリンを服用する高齢者と、偽薬を服用する対照群を比較した無作為化プラセボ対照試験「 ASPREE試験 」の被験者です。
ASPREE試験の被験者はオーストラリアとアメリカにまたがっており、ほとんどは研究開始時点で70歳以上で、アメリカの少数民族のみが65歳以上でした。被験者は研究開始時点で心血管疾患や認知症、身体障害、その他の重篤な慢性疾患の既往歴がありませんでした。
研究チームは同意が得られた1万3500人以上の被験者の遺伝子データを解析し、アスピリンの服用と認知症リスクとの関連性について調査しました。中央値で4.6年間の追跡期間中に、被験者のうち345人が認知症であると新たに診断されました。
データを分析したところ、「血小板の数が多い」ことに関連する遺伝的プロファイルを持つ被験者は、低用量のアスピリン服用による認知症リスクの軽減効果が大きいことが判明しました。
具体的には、血小板の数が多い遺伝的プロファイルを持つ上位20%の被験者のうち、アスピリンを服用したグループでは認知症の発症率がわずか1%だったのに対し、偽薬を服用したグループでは発症率が3.3%でした。これは、アスピリンを服用したグループでは、認知症の発症リスクが相対的に70%低いことを意味します。
以下のグラフは、左(A)が血小板の数が多い遺伝的プロファイルが低い下位80%、右(B)が血小板の数が多い遺伝的プロファイルが高い上位20%の被験者について、アスピリン服用グループ(赤色)と偽薬服用グループ(青色)の認知症発症数を表したもの。縦軸が累積した認知症発症数、横軸が年数を表しており、血小板の数が多い遺伝的プロファイルを持つ上位20%では、アスピリンを服用したグループの認知症発症数が減っていることがうかがえます。
しかし、アスピリンを服用した人では血液がサラサラになる影響か、「大量出血のリスクが高まる」というデメリットも確認されました。偽薬を服用したグループでは、追跡期間中に大量出血を経験する割合が2.1%だったのに対し、アスピリンを服用した人では4.4%が大量出血を経験したとのことです。
フランケ氏は「特に深刻な出血のリスクが高まることを考えると、この研究結果に基づいて認知症予防のために、医師に相談せずにアスピリンを服用し始めるべきではありません。今後は他の研究でこの結果を確認し、最終的にはこの遺伝的プロファイルを持つ人々を対象とした臨床試験で検証する必要があります」と指摘しています。
とはいえ、世界中で認知症が公衆衛生上の重大なリスクとなる中で、今回の研究結果は有望な道筋を指し示すものとなります。フランケ氏は、「もしこの結果が確かなものであれば、アスピリンがすでに安価で広く入手可能であるという事実は、個別化された認知症予防を現実的なものにする可能性があります」と述べました。
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