ネットワーク進化論 - モバイルとブロードバンドでビジネス変革 第48回 携帯4社が共同でエリア拡大を検討、なぜいま「ミリ波」に各社が力を入れるのか
45 分前
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの携帯4社は2026年9月11日、各社が免許を保有するミリ波のエリア拡大に向けた共同検討の実施に合意したと発表しました。インフラシェアリングとは異なり、携帯電話会社同士が協力してミリ波のエリア拡大進め有効活用を模索する動きとなるようですが、競合関係にある4社がミリ波で協力するのには「AI」が少なからず影響しているようです。 →「ネットワーク進化論 - モバイルとブロードバンドでビジネス変革」の過去回はこちらを参照。
普段は激しい競争を繰り広げている、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの国内携帯4社。しかし、最近では4社が協力して取り組む事例も増えています。
例えば2024年以降、4社は大規模災害からの早期復旧に向けた協力を強化。災害などである会社のネットワークが使えなくなったら、他社のネットワークに一時的に乗り入れてユーザーの通信を維持する「JAPANローミング」を2026年4月に開始するなど、協力の成果を積み上げているようです。
ただし、そうした災害時以外でも、最近では4社が協力して取り組む様子が見られるようになってきており、その1つとなるのがミリ波です。実際2026年9月11日には、携帯4社が5Gの「ミリ波」利用エリア拡大に向け、共同検討をすることに合意したと発表しています。
その内容によりますと、通信事業者同士でミリ波による5Gエリア拡大を実現できるか、実現したとして効率的に運用できるかを検討するとのこと。具体的にはミリ波の中継器や基地局などについて、各社が整備した設備を有効活用する検討が進められるようです。
この取り組みで最大のポイントとなるのは、共同検討の対象がミリ波に限られること。主として30GHz以上、日本では28GHz帯が用いられているミリ波は、周波数の帯域幅が大きく大容量通信に非常に適しています。
一方で周波数が非常に高いことから障害物に弱いうえ、減衰もしやすいことから遠くに飛びにくいため、携帯電話会社にとって非常に扱いづらく、現在に至るまでほとんど使われていない周波数帯として知られています。
5Gで割り当てられたミリ波をいかに活用するかは業界全体の大きな課題ではありますが、その周波数特性上ミリ波のインフラを1社だけで整備するのは困難です。そこで4社が協力してミリ波のネットワークを整備し、エリアを広げてミリ波の有効活用を進めたいというのが、今回の共同検討の背景にはあるといえそうです。
実は、複数の携帯電話会社が協力してミリ波のエリアを広げる取り組みは、すでに一部で進められています。2026年5月20日にはKDDIとNTTドコモが、ミリ波のエリアを効率的に拡大する共用中継器を京セラと共同開発しており、同日より東京都の上野恩賜公園で実証実験が進められています。
KDDIとNTTドコモは、京セラとミリ波のエリアを広げる共用中継器を開発。これを活用した実証実験を、東京・上野で実施している
この中継器はもともと京セラがKDDIと開発したもので、中継器自身が電波を送受信する機能を持ち、環境に応じて装置が送受信を切り替えることにより、メッシュ状にエリアを拡大できるもの。
基本的に電源さえあれば動作するため、基地局を整備するのと比べ運用にかかる手間やコストを抑えてエリアを広げられることから、ミリ波のエリア拡大に大きく寄与するとして注目されていました。
実証実験に用いられているミリ波の中継器。KDDIと京セラが開発した中継器をベースとしており、設置することでエリアをメッシュ状に広げられるのが特徴となる
それをベースにKDDIとNTTドコモの双方のネットワークに対応したのがこの中継器となるようです。すでに実証実験が進められるなど実績を持つだけに、今回の共同検討の中ではこの中継器の活用も検討されるものと見られます。
しかし、他にもここ最近携帯各社はミリ波の活用に向けた取り組みを積極化しているようです。例えばソフトバンクは2026年3月27日から三重県鈴鹿市で開催されていた「2026 FIA F1世界選手権シリーズ Aramco 日本グランプリレース」で、ミリ波を中継用カメラの映像伝送に活用したり、公衆Wi-Fiスポットに活用したりする実証実験を実施していました。
ソフトバンクは「2026 FIA F1世界選手権シリーズ Aramco 日本グランプリレース」で5G SAを活用した実証実験を実施。中にはミリ波をWi-Fiスポットのバックホールに活用する取り組みもなされていた
またKDDIは2026年8月3日に、韓国サムスン電子とミリ波を活用したVTuberの3Dトークイベントを実施。サムスン電子製の折り畳みスマートフォン「Galaxy Z Fold8」シリーズを用いて3DのVTuberアバターの膨大なデータを大容量通信に強いミリ波で素早く転送し、AR空間上でストレスなくイベントを楽しめる様子を披露していました。
KDDIはミリ波をVTuberのトークイベントに活用。ミリ波に対応したサムスン電子のスマートフォンを用い、VTuberの3Dアバターを素早く転送し、イベントをストレスなく進行できることをアピールしていた
そしてNTTドコモは2026年8月24日、三菱地所と東京の大手町・丸の内・有楽町エリアで次世代スマートシティ構築連携に合意したと発表していますが、その目的の1つにこれら大都市部で、より多くの基地局やアンテナの設置が必要なミリ波のネットワークを、都市景観と調和した形で実現することを目指すこと。ミリ波を前提とした都市開発を進めようとしている様子がうかがえます。
携帯電話会社がなぜ、これまで消極的だったミリ波の活用に大きく舵を切っているのかといえば、そこにはAIの存在が大きく影響しているようです。モバイル通信は動画視聴の増加などで今後も通信トラフィックの増加が見込まれていますが、さらに今後を見据えると、AI同士が自動でやり取りすることで生まれるトラフィックが急増すると見られています。
そしてAIのトラフィックは、ダウンロードが多かった従来の通信トラフィックと比べるとアップロードが大幅に増えると見られていますし、AIエージェントの普及で昼夜問わずAIがトラフィックを生み出すとの見方もあるようです。
それだけに携帯電話会社は、AIで通信需要が大きく変化する将来に備え、ポテンシャルは大きいが活用が難しいミリ波を、実用的な水準にする取り組みを急ぐようになったのでしょう。
ただし、ミリ波に関しては、スマートフォンなど端末側の対応が一向に進まず、ネットワークを整備しても活用が進まないことも大きな課題とされています。ですが昨今のメモリ価格高騰などによってスマートフォンの価格は急騰しているため、メーカー側も搭載にコストがかかるが販売拡大にはつながらない、ミリ波への対応には一層消極的と見られています。
それだけに携帯電話会社側には、先にも触れたWi-Fiスポットのバックホールとしての活用など、端末側に依存することなくユーザーがミリ波の恩恵を受けるソリューションを開拓することが、同時に求められる所ではないでしょうか。
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。
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