管理職の6割がハラスメント恐れ“育成キャンセル”を経験…なぜ上司は部下を指導できなくなったのか? 若手の8割は「率直な指導を求めている」調査も…“面談にAI導入”は救世主となるか(ABEMA TIMES)
51 分前

ハラスメントを恐れて部下や後輩への指導・育成を避ける“育成キャンセル”が職場で広がっている。ハラスメントと育成キャンセルに関する意識調査では、管理職の6割以上が育成キャンセルを行ったことがあると回答。一方で若手社員のおよそ8割が、ハラスメントに当たらない範囲での率直な指導を求めているという結果も明らかになった。調査会社は、管理職が指導とパワハラの境界線に強く悩み疲弊していると指摘する。
テレビ番組でも取り上げられ話題となった“育成キャンセル界隈”をめぐっては、SNS上でも「部下ばかりが守られて、上司が守られないのであればキャンセルは当然」「放置もハラスメントだし責任の放棄だ」など賛否両論の声が上がっている。精神障害の労災請求件数を年齢別に見ると、中間管理職世代にあたる40代が最も多いというデータもある。
こうした状況の打開策として注目されるのが、1on1面談へのAI活用だ。上司と部下のコミュニケーションをAIでサポートするサービスも登場している。『ABEMA Prime』では、育成キャンセルの実態とAI活用の可能性について考えた。
ハラスメントを恐れて部下や後輩への指導・育成を避ける“育成キャンセル”が職場で広がっている。ハラスメントと育成キャンセルに関する意識調査では、管理職の6割以上が育成キャンセルを行ったことがあると回答。一方で若手社員のおよそ8割が、ハラスメントに当たらない範囲での率直な指導を求めているという結果も明らかになった。調査会社は、管理職が指導とパワハラの境界線に強く悩み疲弊していると指摘する。
テレビ番組でも取り上げられ話題となった“育成キャンセル界隈”をめぐっては、SNS上でも「部下ばかりが守られて、上司が守られないのであればキャンセルは当然」「放置もハラスメントだし責任の放棄だ」など賛否両論の声が上がっている。精神障害の労災請求件数を年齢別に見ると、中間管理職世代にあたる40代が最も多いというデータもある。
こうした状況の打開策として注目されるのが、1on1面談へのAI活用だ。上司と部下のコミュニケーションをAIでサポートするサービスも登場している。『ABEMA Prime』では、育成キャンセルの実態とAI活用の可能性について考えた。
大手チェーン企業の人事部に所属するよっしー氏は、自身のSNSでの投稿が多くの共感を集めた当事者だ。「会社はいつでも新人の味方、丁寧に育てても辞める、厳しく少し言うとすぐパワハラ扱いされる、仕事と責任は増えるが給料は増えない、頑張って育成しても評価されない」という管理職の実情を発信し、同じ悩みを抱える人々からの共感のリプライが相次いだという。
よっしー氏は育成キャンセルが広がる背景について、「(指導が)ハラスメントと取られる可能性が非常に高まっている。社員が話せる相談窓口のようなものが増え、(ハラスメントの申告が)話しやすくなっているというのもある」と語る。また、自身も中間管理職として「言われるのが怖い」という感覚を持つと明かす。「相談窓口が普及した結果、直接上司に言うラインではなく、(窓口から)ループして自分に来るというのを実際に経験しているので、怖い。それが一回あると次から言えない感じになってしまう」と述べる。
会社としての対応についても、「まだ今の現状に気づくか気づかないかという瀬戸際。まだまだ対策ができておらず、中間管理職などミドル層がメンタルを病むケースが非常に近頃増えている」と説明する。
この日MCを務めたメルカリ AI strategyのハヤカワ五味は「指導する側も今までとやり方が違いすぎて、どうしたらいいか分からないという塩梅の難しさがある」と述べ、株式会社笑下村塾代表のたかまつなな氏は「アメリカの国際機関に行った知人が、上司が自分の成果物をすごく褒めてくれるのに全部修正される。ハラスメントにならないように、そういった対応をされており、それがすごく嫌だと言っていた。行き過ぎたらお互い仮面をかぶっているような感じで、ちゃんと議論できない」と話す。
東大法科大学院2年の清野孝弥氏は、ハラスメントを恐れる以外の要因にも目を向け、「仕事と責任が増えるが給料が増えない、頑張って育成しても評価されないというのは、昔から中間管理職の悩みとして上がっていたもの。改善が見込めず効果がないという回答もある。何が一番大きい要因で育成キャンセルに至っているのか単純に知りたい」と問いかける。作家の佐々木俊尚氏は「指導するというファクトベースの話と、指導される側の感情のレベルとのズレが常に生じる。感情はこもっていなくて指導しているだけなのに、指導される側はそこに感情が入っていると思い込んでしまう」と構造的な問題を指摘した。
上司と部下のコミュニケーションをAIでサポートする「KAKEAI」代表の本田英貴氏は、部下の育成をめぐる課題の根本にある構造を指摘する。「部下の育成は会社にとって重要であるにもかかわらず、どうしても緊急度は低い。それでも会社の中長期的な発展のため、誰かが育成をやらなければいけない」と語る。
そのうえで、「もともとブラックボックス化していて属人的で、みんながめんどくさいという育成を、どのようにもっと手軽にしていけるかという時期に入っている」と現状を分析する。
佐々木氏は、育成の担い手が曖昧になってきた背景を指摘する。「昔だったらマネージャーかどうかに限らず、先輩が後輩に自分のやり方を継承していくような以心伝心があった。今はそれがマネージャーの仕事だろうとなって、エキスパートとマネージャーがだんだん職種として分離していく傾向にある。エキスパートとしては自分のやっている仕事をわざわざ若手に教えるインセンティブは何もない。マネージャーというものは日本企業の中ではいまだそこまで固定していなくて、みんなマネージャーをやりたくなくて誰もやらないという状態になっている。マネージャーって本当は専門職であって、それを専門に育成した方がいいんじゃないかと感じる」と述べる。
本田氏はこれに対し、育成担当と業務マネジメントを分けて取り組む企業も存在すると紹介しつつ、「成長を支援するための材料が仕事であり、その仕事を使ってどのようにして会社として業績につなぎ、かつ社員の成長につなげるか。それを実現するとなると、育成とマネジメントを分けるのはなかなか難しい」と説明する。
そうした課題への一つの解として注目されているのが、上司と部下の1on1(1対1)面談へのAI導入だ。Kakeaiのシステムは、面談の前・中・後の三段階でAIがサポートする仕組みになっている。
面談前には、部下が「今回話したいこと」をスキルやキャリア、人間関係などのテーマから選び、「アドバイスが欲しい」「一旦今日は話を聞いてくれ」「意見が欲しい」といった粒度のリクエストも設定できる。本田氏は「自分から今後のキャリアについて話しにくいタイミングだったり、選択肢があるだけで嬉しいという場合もある」と語る。この情報をもとにAIが上司に対し、「今回メンバーはこんなことを期待しており、これまでのやり取りや、関係性を踏まえると今回はこのように話をして、次回はこうやった方がいい」といった形で事前に助言するという。
面談中は、AIがリアルタイムで対話の内容をまとめ、話が行き詰った際に「こういうことを話した方がいい」と介入するなどファシリテーターとしての役割を担う。また、上司が部下に言いにくい指摘をしたい場合にも、「AIが『部下の期待はこうだから、こういう順番で言いましょう』とか、『最近(部下は)残業が続いているので、今回はぐっとこらえてこうしましょう』などと提案してくれる」と本田氏は説明する。
ハヤカワ五味は「これまでは1on1の前に上司は準備をしていたが、それを補助してくれるだけでも助かる人はいると思う。1on1のやり方って意外に習ったり習わなかったりする。しかもそのお作法も時代によって変わってきているだろうし」と評価する。
よっしー氏も「(AIによる)前さばきによって、言葉を選んだり、言ってはいけないことや言っていいタイミングなどがわかるだけでもお互いにコミュニケーションを取りやすいのではないか」と述べ、AIの介在に一定の期待を示す。また人事部としての観点から、「今までの1on1もデータで見れる仕組みはいっぱいあるんですけど、内容や感情のところまで一発で見れるものはあまりないと思っている。そういった部分で有効活用できるのではないか」と話す。
ハラスメント防止の観点についても、本田氏は、現行のKakeaiにはハラスメント防止機能はないとしたうえで、定期的な1on1の場が設けられ、会話の記録が残ることで、ハラスメントは起きにくくなるとの見方を示す。面談内容のログは当事者2人だけが確認できる仕様で『言った』『言わない』というトラブルも起こりにくいという。一方で清野氏は「AIを導入したら1on1が円滑に進むとは想像できたが、パワーハラスメントを防ぐツールになりうるかはちょっと微妙。結局AIや人間の仲介役がいたとしても解消できない。ハラスメントの基準を明確化するというのがそもそも大事なのではないか」と課題を指摘する。
佐々木氏は役割分担のあり方について「AIが指摘して、人間がケアするという役割分担があるんじゃないか。期日内にやらなきゃいけないという課題を伝えるのは別にAIでも構わない。でも俺は君のことを信用してるからやってくれるよね、というメンタルケア的なところは人間が担うという」と述べた。
本田氏は最後に、「本音が話せないと、そもそもそこで現れるデータって意味がない。しっかりこのデータを守りながら企業のニーズに応えて、この場が成立するようにするサポートをしていきたい」と語った。
(『ABEMA Prime』より)
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