捕獲数は数百万匹、うろこ目当てに世界一密売される野生哺乳類の一つセンザンコウの惨状(ナショナル ジオグラフィック日本版)
48 分前

午後4時、カメルーン。中部の森。起床の時間がやって来た。
最初に起こされたのは、風通しの良い診療所に置かれた木箱に入っていたセンザンコウだ。体長は約1メートル、体高が低く、頭部は細長い。かぎ爪の付いた力強い前脚と立派な尾をもっている。
この個体は雌で、近くにあるムバルマヨという町の市場で保護された。ティッキ・ハイウッド財団のセンザンコウ保護センターの創設者でジンバブエ人のリサ・ハイウッドが餌の入った容器を差し出すと、その個体は細長い舌を使って食べ始めた。
センザンコウの視力は高くはないが、その分を優れた聴覚と鋭い嗅覚で補っている。だが生理学的に見て最大の特徴は、うろこにある。
背中は鼻から尾までケラチン質のうろこに覆われている。ほかの動物に襲われると、反撃したり逃げたりする代わりに、頭と脚と腹を内側にきつく丸めて尾で覆い隠し、ボール状になる。その状態になったら最強の捕食者もお手上げだ。
だが皮肉なことに、この身を守る方法がセンザンコウを弱い立場に追い込む大きな原因の一つとなっている。うろこを求める犯罪組織が地元住民をそそのかして、センザンコウを捕らせているのだ。丸まっている方が、ハンターにとっては捕まえやすい。
センザンコウは現在、世界の野生哺乳類のなかで最も大量に密売されている動物の一つだ。違法取引の全貌はまだわからないが、複数の研究によれば、この数十年間に捕獲されたアフリカのセンザンコウは、数百万匹にのぼると考えられる。
国際的な闇市場を動かしているのは、主に東アジアからの需要だ。センザンコウの肉は珍味として、うろこは中国伝統医学に使われる薬の主要原料として需要が高い。
加工されたうろこは生薬として販売され、母乳の分泌を助けるほか、肝臓病や不妊症、関節炎や各種の腫瘍など、幅広い疾患の治療薬の成分として使われる。そうした製品に科学的に証明された効能がないことは、複数の研究によって示されているが、需要の減少には結びついていない。
アフリカの密輸拠点であるナイジェリアでは、コロナ禍をきっかけに、税関当局が闇市場の首謀者の徹底的な摘発に乗り出していた。国際的なNPO「野生動物司法委員会」からの情報提供を受け、ナイジェリア税関は2021年から25年の間に最大で13万5000匹のセンザンコウから採取された25トン以上のうろこを押収し、密輸業者の上層部を数人逮捕することに成功した。
だが、違法取引は秘密裏にさまざまな経路で行われるため、摘発の長期的な効果を推し量るのは難しいと、国際自然保護連合(IUCN)の種の保存委員会のセンザンコウ専門家グループで共同議長を務めるマット・シャーリーは慎重だ。「取り締まりが進んでも、市場がなくなったわけではありません」
2026年に入ってからも、カメルーンの海辺の町イデノーで、特殊部隊が総重量約50キロのセンザンコウのうろこをゴリラの頭骨や象牙といったほかの禁制品とともに押収している。
※ナショナル ジオグラフィック日本版10月号特集「捕獲数は数百万匹 うろこ目当てに大量に密売されるセンザンコウ」より抜粋。
午後4時、カメルーン。中部の森。起床の時間がやって来た。
最初に起こされたのは、風通しの良い診療所に置かれた木箱に入っていたセンザンコウだ。体長は約1メートル、体高が低く、頭部は細長い。かぎ爪の付いた力強い前脚と立派な尾をもっている。
この個体は雌で、近くにあるムバルマヨという町の市場で保護された。ティッキ・ハイウッド財団のセンザンコウ保護センターの創設者でジンバブエ人のリサ・ハイウッドが餌の入った容器を差し出すと、その個体は細長い舌を使って食べ始めた。
センザンコウの視力は高くはないが、その分を優れた聴覚と鋭い嗅覚で補っている。だが生理学的に見て最大の特徴は、うろこにある。
背中は鼻から尾までケラチン質のうろこに覆われている。ほかの動物に襲われると、反撃したり逃げたりする代わりに、頭と脚と腹を内側にきつく丸めて尾で覆い隠し、ボール状になる。その状態になったら最強の捕食者もお手上げだ。
だが皮肉なことに、この身を守る方法がセンザンコウを弱い立場に追い込む大きな原因の一つとなっている。うろこを求める犯罪組織が地元住民をそそのかして、センザンコウを捕らせているのだ。丸まっている方が、ハンターにとっては捕まえやすい。
センザンコウは現在、世界の野生哺乳類のなかで最も大量に密売されている動物の一つだ。違法取引の全貌はまだわからないが、複数の研究によれば、この数十年間に捕獲されたアフリカのセンザンコウは、数百万匹にのぼると考えられる。
国際的な闇市場を動かしているのは、主に東アジアからの需要だ。センザンコウの肉は珍味として、うろこは中国伝統医学に使われる薬の主要原料として需要が高い。
加工されたうろこは生薬として販売され、母乳の分泌を助けるほか、肝臓病や不妊症、関節炎や各種の腫瘍など、幅広い疾患の治療薬の成分として使われる。そうした製品に科学的に証明された効能がないことは、複数の研究によって示されているが、需要の減少には結びついていない。
アフリカの密輸拠点であるナイジェリアでは、コロナ禍をきっかけに、税関当局が闇市場の首謀者の徹底的な摘発に乗り出していた。国際的なNPO「野生動物司法委員会」からの情報提供を受け、ナイジェリア税関は2021年から25年の間に最大で13万5000匹のセンザンコウから採取された25トン以上のうろこを押収し、密輸業者の上層部を数人逮捕することに成功した。
だが、違法取引は秘密裏にさまざまな経路で行われるため、摘発の長期的な効果を推し量るのは難しいと、国際自然保護連合(IUCN)の種の保存委員会のセンザンコウ専門家グループで共同議長を務めるマット・シャーリーは慎重だ。「取り締まりが進んでも、市場がなくなったわけではありません」
2026年に入ってからも、カメルーンの海辺の町イデノーで、特殊部隊が総重量約50キロのセンザンコウのうろこをゴリラの頭骨や象牙といったほかの禁制品とともに押収している。
※ナショナル ジオグラフィック日本版10月号特集「捕獲数は数百万匹 うろこ目当てに大量に密売されるセンザンコウ」より抜粋。
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